映画『アナザープラネット』の宇宙飛行士とインドの騒音と。

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インド日記

12月某日。

インドでの初Airbnb、快適だ。部屋も共用部分も、欲する条件を十二分に満たしている。決まった時間に毎日清掃が入るし、キッチンで使ったものも洗う必要がない。洗おうとして、止められた。自分たちの仕事だから、と、このAirbnbの世話人である、みるからに実直なネパール人青年に逆にいさめられた。つまりは、このAirbnbでは、不要な雑用から解放された時間を好きに使える環境ということ。

私の部屋はこちらの感覚では多分狭い。でも私にはちょうどよい。窓は二面にあって、日中、日の光がちゃんと入る。固すぎも柔らかすぎもしないスプリングの清潔なベッドもいい。机もある。難をいえば机に対して椅子が低すぎることだけど、まあ枕でなんとか嵩上げしている。

浴室はまあ清潔、お湯もばっちり熱い。しかも透明。お湯が熱くて透明なのなんて当たり前。そう、日本では。バジェット旅人目線で見る癖が抜けなくて切なくもあるけれど、そんなことでも幸せに感じる閾値の低さは、そういう旅で鍛えておいて(?)よかったと思うところ。

周辺は閑静な住宅街で、みるからに治安もいい。食事場所は徒歩圏内に高級から軽食まで揃っている。食料品は、小売店、ホールセ―ルの店、スーパーがそろっている。雑貨や衣服の店、銀行、整えられた公園。長居に向いていそうなカフェも複数ある。完璧だ。

つまり。現2023年時点のバンガロールでは、月五万円以内の住居費で私がひとまず満足できる環境が得られるということ。住居費にこれくらい使っても、日本で生活するずいぶん少ない生活費ですっきり暮らせる。住みたかった国で。ありがたいことだ。

Airbnbでの滞在は、年単位での賃貸に比べたら割高なのかもしれないけれど、実際自分の予算では高めだけれど、ホテルよりははるかに割安だし、自由度も高い。数ヵ月単位で拠点を移しながら「生活」をしたい今回の希望には、やはりAirbnbが一番かなっている。

ちなみにAC付きじゃなければもっと全然選択肢はあった。バンガロールの12月のリアル気候がいまいちつかめず、念のためとAC付きを選んだら、まったく必要なかった。むしろ寒かった。すごーく寒くはないけど、予想よりずっと寒かった。

バンガロールの気候は今後も観察していって、そのうち記事にする気まんまんなので一旦横に置くとして、始めに戻ると、Airbnb生活が快適だという話。

ただ。

でたよ、”ただ”。

ただ、誤算があるとしたら、隣が目下工事中であること。今も屋上で作業者が2人、餅つきのように交互に、一定のリズムを保って、屋上の地面に大きな鉄槌を振り下ろしている。数日前からずっと同じ音がしている。いつまで続くのだろう。いずれにしても結構な音だ。来てそうそうに雨続きは残念ではあったけれど、雨の日は工事をしないのか、騒音がやむので助かった。今日は9時に始まった。


数日後、家があった部分は更地になった。

騒音には敏感な方だ。集中したいことが定期的にある生活では、静かな環境の確保は重要だ。今回の仮移住では、何度も挫折してきたルーティンを確立したいという裏目的もある。インドで? そうインドで。本気です。だから、脳のフレッシュな午前中になにしてくれとんねん、という気持ちもなくはない。

それでも。

今外でそれが起きている、その音を起こしている人たちがインドの人々である、なぜならここはインド、バンガロールだから、という事実がむしろ静かな高揚をもたらしている。あらゆる雑多な必要ごとをすませてここに来ている、来てしまっている、今私はここにいる、そのことが、騒音に対する私の心を寛容にさせる。

や、前からそういうところはなかったか。確かに私は、インドでは騒音に対して寛容なところがある。日本仕様の私より明らかにゆるい。

ということはだ。気の持ち方しだいで騒音が騒音でなくなるということはやはりあるのだ。映画『アナザープラネット』で、少女が喪失感に苛まれている中年男に語った宇宙飛行士の話のように。たった一人で宇宙を周回する宇宙飛行士。宇宙船内で断続的に続く原因不明な騒音に気が狂いそうになった男が、どのようにその音を克服したのか。あの宇宙飛行士ほどの境地にいたれるかはともかく、インドで聞く騒音は、明らかに私の許容ハードルを押し下げている。それともインドの人らは、あの人らはそもそもが私達からしてみればおどろくほどに騒音閾値が低いので、空中に溶け出している彼らの感覚が私の中にも伝播してきているのだろうか。

日記形態で流れにまかせて書いていると、一体おまえは何を書いているのだ、と我に返ることがある。今がその時だ。御託をならべがちなのが私の困ったところだ。自制しよう。

それに、こんなすかしたことを書いているけれど、そのうち、がー!やっぱりうるさーい!となりそうな気配も濃厚ではある。私のことだから。

ところで、今は、なんらかの工程を確認しているような会話が聞こえているのだけど、あれは何語だろう。ヒンディではないのはわかる。口の中を舌がろるろるまわっているような、タミル語だろうかテルグ語だろうか。それともカンナダ語? まるきりわからない。いつか、判別できる日はくるのだろうか。少なくとも1つは習得したいものだけど。

話がとっちらかっているな。このまま書き続けると収集がつかなくなるので、このへんで終わる。