今回のカミーノ旅の主要動機である2つの映画
『星の旅人たち』と『サン・ジャックへの道』について。
続きです。『サン・ジャックへの道』編。
サン・ジャックへの道 [DVD]
ミュリエル・ロバン,アルチュス・ド・パンゲルン,ジャン=ピエール・ダルッサン,パスカル・レジティミュス,マリー・ビュネル/ハピネット
『サン・ジャックへの道 』
原題:Saint-Jacques…La Mecque
監督:コリーヌ・セロー
出演:アルチュス・ドゥ・パンゲルン、ジャン=ピエール・ダルッサン、ミュリエル・ロバン
制作:2005年
離れて暮らす仲の悪い三人兄妹が、母親の遺産を相続するため、遺言に従ってしぶしぶサンティアゴ・デ・コンポステーラ(サン・ジャック)までの巡礼路を2ヵ月にわたり歩くはめになる。同じ巡礼ツアーに参加した者はそれぞれに問題や秘めた想いを抱えており、時に反発し、交流を深めながら、同時に自身を見つめなおしていく。
『星の旅人たち』は、スペイン国境近くのサンジャンからの出発でしたが、こちらはそのずっと手前、フランスのル・ピュイが出発地ですので約1500km、2ヵ月以上の道のり。
軸となるのは、顔を合わせれば衝突、だけど母親の遺産は相続したいがために、いやいやカミーノ参加を承諾する3人兄弟。
『アメリ』で売れない作家役だったアルチュス・ドゥ・パンゲルンが、会社の社長で薬物依存ぎみの長男ピエール、私はこの映画で初めて知ったミュリエル・ロバンという女優さんが小学校教師の長女クララ、それから『ル・アーブルの靴磨き』などのジャン=ピエール・ダルッサンが酒癖の悪い無職の三男クロードを演じています。
余談ですが、このJ=P・ダルッサン、女にもてるという設定なのですが、
この人が?え?・・・え?
とつい思ってしまう風貌^^;
実は『星の旅人たち』は二本立てで観たのですが、もう一本がこの人の出演する『キリマンジャロの雪』でした。その中で苦悩するも誠実な決断をくだす夫を演じており、ほかでも真摯に妻を愛する夫だったりスキのない刑事だったり、映画によって異なる顔を見せてくれる味のある俳優さん、だし割と好き、とは思っているのだけど、この映画は
え?・・・・モテ・・・え・・・?
というどうでもいい私感は横に転がすとして、この3人に加え、一行のメンツはわけあり女性、高校生女子二人組、そのひとりに恋するムスリムのクラスメイトと、その友達で失読症だけど気のいい男の子の二人組、そしてガイドの総勢9人。
星の旅人たちの倍以上。
この映画も基本、道をひたすら歩いていく、その中で起きる人間模様、というシンプルな筋書きなのですが、これだけ人数いるにもかかわらず、各人のエピソードがきっちり描かれており、最後まで退屈しません。
星~よりコメディ色が強く、軽やかですがこちらも胸にしみる内容になっています。特に、二度目の観賞時は、伏線に明確に気づいたりして、知ってから見るとよけい胸が痛かった。
みながそれぞれ近くなっていくのですが、クララと失読症の青年の交流が好きだったなあ。長男ピエールとクララの関係の変化も。
しっかり恋愛要素があるところなど、女性監督らしいと感じるところも多かったです。
話の半分はフランス側の行程、フランス側の風景は、スペイン側とまた違っていて、ル・ピュイの道を歩きたい人は参考になるのではと思います。・・・なんてわたしが言うまでもなく、この道を歩く人は、この映画を観る/観ている可能性が高い気もしていますが。
途中のサンジャンからは『星の旅人たち』と同じ、「フランス人の道」に合流するのですが今回2作を立て続けにみてみて、2つの映画で出てくるポイントが微妙に違うのも面白かったです。
星~は、アメリカという海を隔てた地からはるばるやってくるせいか、観光目線の描写も多い気がしました。拠点拠点の見どころを抑えてある印象。
反面、サンジャック~の方は美しい風景や建物も出てきますが、星~よりはさらっと流す感じ。それに視点が欧州内部と感じることが多かった。スペインとフランスの関係、移民問題など。
ほかにも、監督の違いもあるでしょうが、フランスとアメリカの描き方の違いみたいなものを感じました。
星~は、良くも悪くも合理的、はめをはずすにしても秩序は守る感じ。
サン~はどちらかというと観念的寓話的、夢で表現したりマグリットの絵のようなシーンがあったり。まあこれはコリーヌ・セローの特色なのかもしれないけれど。トーンでいえば好みなのは実はこっちの方。
でも自動涙製造装置になってしまうのは星の旅人たちの方。
あくまで個人的に感じた違いですが、そういった違いもおもしろく、どちらが上と決められないほど、どちらも好きな映画です。
**
巡礼路は、聞く限り、絶対に最初から最後までひとりで歩くことにはならないそうです。人との出会いがある。
それが楽しみのひとつでもあります。
わたしに訪れる出会いはどういうものなんだろう。それとも最初から最後まで独り歩きを貫徹する初の巡礼者となるのか。(う、書いててさみしすぎる・・・。
英語は世間話はとりあえずできるけど、とりこぼすこともまだまだあるという程度、初対面はわりと平気、でも内心人を選ぶ、基本ひとりは苦にならないタイプ、というよりはままひとりを好むタイプ。
そういう人間が巡礼路を歩くと何が起きるのか。
そのへんもまあ、観察してこようと思います。