星の旅人たちと行くサン・ジャックへの道 34+3日目

サンティアゴ巡礼

 

5月29日 曇りのち晴れ

巡礼は続く。

サンティアゴ以降も地の果てに向かう道があり、サンティアゴでゴールを迎えたあと、その先に足を伸ばすペレグリーノも多い。

わたしも、と言いたいところだけど、歩きカミーノは身も心もサンティアゴで終わり、終わりったら終わり、というわけで今回はバス。なので巡礼というよりは半分普通の観光のようなものなんだけど。それでもフィニステーラに着いてアルベルゲにチェックインした時は、まだカミーノは続いていると思えてなんだか嬉しかった。

ユンさんに教えてもらったアルベルゲに入ると、ひとんちかと思うようなダイニングで誰かが誕生日を祝ってもらい感極まって泣いているところだった。そういう取り込んだ中だったにもかかわらず、入っていったわたしに対する視線もやわらかく、まるで家族の誰かが帰ってきたかのよう。これが大げさな歓待だったらひいてしまって逆に泊まるのをやめていたかもしれないのだけど、あまりに自然で、流れのままにモロッコの手の護符と同じ名を持つ女主人に海が遠くに見える部屋に案内してもらい、気づいたら淹れてもらったコーヒーを飲みながらホスピタレロたちとダイニングでくつろいでいた。

ここにはホスピタレロ(アルベルゲの管理人)が複数人いて、それぞれ滞在も長いようなのだけど、どうも「働いている」わけではないらしい。少なくともその意識はなく自発的にやっているのだといっていた。みなもともとはペレグリーノで、そのうちの一人ハビエルは、12回フランス人の道を歩いており、そのうちの4回はすべての季節を味わいたくて1年のうちで4回歩いたのらしい。もう今さら驚かないけど、ペレグリーノ、いろいろとおかしい人多い(褒め言葉)。

ひと息ついたあとはフィニステレ岬へ。3キロの道のり。まずは町を出てすぐのところにある小さいビーチでしばらく海をみてぼんやり。サンティアゴを出る頃は曇っていた天気はすっかり晴れていて、海は青く、気温はほどよく、あーここまできてよかった、と心底思う。

ここの地名についてはフィニステーラと書いてるものとフィステーラと書いてあるものがあり(さらにスペイン語読みだとフィニステレ)どっちなんだ問題が自分の中であったのだけど、ユンさんの説明によると、フィステーラが町の名前、フィニステーラがそのあたり一帯を指す、とのこと(逆だったかな?)。フィニステーラのもともとの語源はテーラ(地)のフィニ(終わり)、つまり地の果てから来ているのだそうで、その名を持つ岬に、巡礼路0kmを示すモホン(標識)がある。それを見ることで、そこまで行くことで、今回のサンティアゴ巡礼の区切りがつく気がした。

同時にここは、『サンジャックへの道』の最終到達地でもある。彼らもバスで移動しているのでその点はわたしと同志wなんだけど、サイードがモンテドゴゾで先に受け取りどうしても告げることができなかった知らせを従兄弟のラムジーに告げる重要な場面がある場所。その海岸を「ここがフィニステレ岬だ」というセリフがあるのだけど、岬にはわたしが見る限り海岸はなかったので、てっきり町の中心部を隔てて反対側にあると聞いたロングビーチだろうと踏み、岬から戻っ足でそのままそこに向かった。でも風景的にどうも違うようだった。

映画の場所の特定はできなかったけれど、影が長く砂浜に伸びる時間帯、このビーチも気持ち良い場所なのはまちがいなく、しばらく波打ち際にそって歩いた。ほたての貝殻が山のように落ちていて、いくつかを拾って帰った。

それで、わたしにしては珍しく9時過ぎのアルベルゲ帰宅となったのだけど、着くと、相変わらずみんなダイニングにいて、イタリア人女性ペレグリーノが焼いたお菓子を食べていた。で、これから夕陽見にいくけど行かない?という。行く行く、というわけで、お菓子をほおばりながら、そのまま女主人ファティマの車で山の頂上へ。

岬の近くにある一面に黄色い花が咲いた頂上のひときわ高みにある岩山によじのぼって、みなでだまって夕陽が沈むのをみた。沈んだあとは気づけば反対側に満月がでていて、今度は満月に向かってまたみなでだまってずっと眺めていた。眺めながら、ここをカミーノ最後の夜にして本当によかった、と思った。

ただね。

二時間ですよ。

いきおいで薄着のまま来てしまったし、途中からは、ぶるぶる震えていて、誰かが持って来ていた寝袋を借り、岩場の陰でなんとか風から身を守り、まだかな、まだ帰らないのかな、と思ってた。でも、イタリア人男子のひとりは岩の上で寝そべってくつろいでいるし、ひとりは半ズボンだし、ファティマは長いあいだ座禅を組む姿で動かないし、ハビエルは風の吹く場所でずっと立っているし、何度も思ってきたことだけど、あらためて言わせてもらう。西洋人、体感温度、絶対おかしい。

余談。
ノーモアペレグリーノメニューの気分で入った港に面したイタリアンレストラン。これが大当たりで、頼んだラザーニャがもうめちゃめちゃおいしかった。また、ここのパンが、この1ヶ月強で間違いなくナンバーワン。あっつあつででてきて、そとはかりっと、バジルの香り、中はふわふわ。冷めてもふわふわだったのでレンチンじゃない。昨日の食事もやもやがこれで払拭できたー。←相当残念だった模様。

さらに(どうでもいい)余談。
ロカ岬、ウシュアイア、ランズエンドに続き、自分の中では4つ目の「地の果て」。世界中に地の果てありすぎ問題もわたしの中にある。まあ大陸の先に海がある以上、いくつもあっても別に問題でもなんでもないんだけど。デアゴスティーニあたりが出したら売れるんじゃないかな、地の果てコレクション(売れない売れない)。

到着地:フィニステーラ

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの「フランス人の道」780km巡礼日誌。
「星の旅人たちと行くサンジャックへの道」とは、巡礼路を歩くきっかけとなった『星の旅人たち』と『サンジャックへの道』という2つの映画タイトルを合体させた旅タイトル。センスがよろしいとはいえないこの映画タイトル合体旅タイトルはブログ主が得意とするところらしいという噂(前科あり)。時に、星の旅人たち=ホシノ、サンジャックへの道=サンジャで略すことあり。なお、ロケ地巡りという性質を含む行程である以上、関連場所を通過する際に映画の内容に触れることがあります(ネタバレ宣言参照)。ラストにどんでん返しがあるタイプの映画ではないですが、ネタバレ過敏症の方は注意。