やっぱり『猫が行方不明』が好き。

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映画語り

セドリック・クラピッシュ監督の『猫が行方不明』は、主人公が飼い猫を探す話だけど、私はといえばずっと『猫が行方不明』のDVDを探していた。

クラピッシュ監督作品で初めて観たのはロマン・デュリス主演のグザヴィエ青春三部作の一作目『スパニッシュ・アパートメント』。バルセロナに留学したフランス人青年と各国から来たルームシェアたちとの交流や恋愛を描いた物語。これがすごくよかったので、二作目の『ロシアンドール』を観たらこれも私は好きで、三作目『ニューヨークの巴里夫』を観たら、うん、まあ、まあまあまあ、だったけど、グザヴィエがようやく落ち着きどころがみつかった点でよかったことにしておこうかなとなり、でもこの時点でもまだ私は『猫が行方不明』を観ていなかった。

パリで『ミッドナイト・イン・パリ』を含む映画15本のロケ地巡りをした2016年の時点でもまだ観ていなかった。だからロケ地巡りをしていない。

パリで映画15本のロケ地を巡ってみた。
タイトルの通りです。 巡り場所の選択は基本的に、映画や俳優や監督に対する思い入れ、印象に残るシーン、などから優先順...

なぜ観ていなかったかというと、DVDが高かったから。小市民的理由。

『猫が行方不明』は前から気にはなっていた映画で、『スパニッシュ・アパートメント』を観た時点で同じ監督ということがわかったため、すぐにでも観たかったんだけれど、その時にはDVDは入手困難かあるとしても高騰した中古、近隣のレンタル屋にはなく、ネットで探してもなく、あるとしてもVHSが渋谷TSUTAYAに、くらいのレベルだった。そして私はビデオデッキを持っていなかった。

高騰といっても、買おうと思えば買える金額。だけどそこまで出すかというと、毎回アマゾン開いて、むむうとなるくらいのモチベーション。いや観たいのよ、観たいけど、他を押しのけて、ってほどでもない。かといって、中古のビデオデッキを買おうかと判断があさっての方向に行くほどには観たい。迷走。そうこうするうちにインド映画狂時代も始まってしまい・・・

とにかくそういうわけで、探していたといいつつ、中途半端に観ないまま、パリロケ地巡りに出発したというわけだった。

で、結局観たのか観てないのかというと、アマゾンでフランス版中古DVDを購入して観ました。でも昔のDVDだからか強気設定なのか、音声はフランス語のみ、字幕なし。フランス語の永遠初心者には太刀打ちできるリスニングレベルではなかったため、念力観賞だった。

それでも。

それでも。

それでも。

観賞前に変な期待があると、「期待」と比較して映画自体が色あせてしまうことあるからそのへんも覚悟してみたのだけど、それでも。

基本軸は猫を探すというシンプルなストーリーだったおかげもあるだろうけど、念力観賞でもわかりやすく、そして、念力観賞というのに、まったく期待に負けていなかった。そうそうこれ!こういうのが観たかったの!という期待そのままの世界がDVDの中にあった。パリ11区の町並みといい、部屋やファッションや小物の色彩といい、口ひげがみえちゃいそうなちっちゃいおばあちゃんを含む残らずかわいらしい人々との交流といい。何も起きないようでいて、ちょっとした機微が随所に散りばめられた映画だった。

私も飼い猫が行方不明になったことがあるので、別なところで切実な気持ちで見ちゃったところもあるのだけど、映画の明るい空気に助けられたところもあった。

こうして、観たのはほんの1年前だけど、無事?大好きな映画になった。

バスティーユ付近も何度か訪れていたからなんとなくわかるような1996年制作だからわからないような、でも次ロケ地巡りに行けるなら、どんなにかわっているとして、この映画で11区付近を巡りたいな。変化も楽しみたい。次普通にロケ地巡りできるなら。

とほ

p.s.
ところで気づいたらいつのまにか日本語版が再販されているんですよね(涙。

 

 

 

裏p.s.
先日、同監督の新作『パリのどこかで、あなたと』を観た。18区で隣同士のアパートメントに住む男女が出会うようで出会わず・・・という話。

(この先、ダークゾーンです。好きな人ごめんなさい、あんまりほめてない)

 

すごく正直に言うと、これ観て、この監督はもういいかなと思っちゃった。とびきり好きな映画が数本あっても全部好きになるとは限らない。どこまでもついていきますな監督もいるけれど。

なんだろう、猫もでてくるし、似たエピソードが出てきてくすっとなる場面もあったし、交点になるアラブ系商店の描き方はよくて、店主も味があって好きだったんだけど(観たことあると思ったら猫が行方不明にも出ててやっぱりいい味出してた人だった)、肝心の主人公ふたりが、ストーリーが・・・うーん。「今どき」を描こうとして、精神分析のみで進む話を持ってくるって。心の機微も救済もなにもかも主人公たち自身が全部言葉で説明してしまっては。

変わってないといえば変わってない。同じ監督のトーンではあるんだよな。だけど旧作にあったキッチュな色彩が失われた感じがした。映画に感じる熱や色ってなんなんだろう。