駄菓子屋の思い出。

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問わず語り

 

先日の記事からお菓子つながりで、子供時代のお菓子の思い出話を。

物語の中の食べ物と翻訳者の功罪
翻訳本に出てくる食べ物について。 『ナルニア国物語』のターキッシュ・ディライト 本の中の食べ物といって真っ先に出てく...

 

子供の頃よく行っていた駄菓子屋というか商店が2つあって、用途によって使い分けていた。

1店目はM上商店。100円を握っていけば複数種のお菓子が買えた時代。王道のチロルチョコ、麩菓子、4つの丸ガムが入ったやつ、白いちょっとじゃりじゃりするクリームを木のヘラですくって食べるやつ、10~20円のスナック菓子(好きだったのはキャベツ太郎)・・・だいたいの駄菓子はここで学んだ。

時々、せまい店内のお菓子と反対側の棚にある雑貨を精査することもあった。100円以内で買える家庭雑貨は意外にあって、唐突にたわしが予算内であることに気づいて買って帰った時は母親に大笑いされた。文房具もここで買った。

しかし駄菓子より文房具よりなによりM上商店の地位を私の中で不動のものにしていたのは、少女漫画雑誌りぼんの付録(だけ)が買えたこと。小学生の頃は漫画を買うことはうちはNGだったため、付録だけが買える喜びがあった。今考えると誰が考えたんだろう、あのビジネス。

夫婦で経営していて、おじ(い)さんが座っていることもあったけど、だいたいはおば(あ)さんが座っていた。記憶の中では思い切り膏薬貼っているイメージだけど、実際は貼ってなかったような気もするし記憶補正されている可能性あり。だけど、ザ・駄菓子屋の記憶をありがとう、だ。

 

2店目はAべ商店というこぎれいなお店。ガラス戸を開くとピンポンと音がして、店内も明るく広く、どことなく甘いいい匂いがして、床は薄いグリーンブルーで、子供の目にはこじゃれてみえた。売っているお菓子もM上商店よりちょっと高めで、握らせてもらえる小銭で買えるのは、びんに入ったザラメのついた飴玉数個とか、1つのスナックを慎重に考えて選ぶ感じだった。

でもここには、お菓子よりもアイスクリームを買うために行くことが多かった。チョコモナカやアイスクリンなんかもよく買ったけど、とりわけ好きだったのはメロン味のアイスにチョコチップが混じっていて、それがホワイトチョコでコーティングされていたアイスバー。

Aべ商店はなにしろ(子供の目には)きれいめだったので、帰り道も、ほんのり明るい未来、みたいな気分で帰ることが多かった気がする。よく覚えているのが、踏切りをこえて家に向かいながら「ああ今はとてもいい時代だなあ。好きなアイスクリームは買えるし、テレビもあるし、車もあるし、シーモール(デパート)もあるし、なにもかもが最先端だな」と少し揚々とした気分でいたこと。たかがお気に入りのアイスを買えただけでなんともちょろい子だけれど、それに「昔」を知りもしないのに、本気で「たった今この時」が時代の最先端だと感じていた。そして、この先ずっと時代は前に進み続けるとうっすら思っていた気がする。

時代は進むばかりではないこと。後退することもあること。いったん見え始めた流れは止まらないこと。逆らうも一つのやり方ではあるけれど、つかのま遅くしたりせきとめることはできてもそれは負荷の大きい方法であり、遅かれ早かれさらに勢いを増すこと。さらには後退はあながち悪いことばかりでもないこと。単にこの世界のことわりにすぎず、上がったものはいずれ下りる時がくること。

Aべ商店から出たあの子は、その後いくつもの変化を通りすぎて、そんな風に考えるようになっている。

とほ

p.s.
本当は2店じゃなくて3店だけど、3店目は賞味期限切れとかカビが生えているウエハースパンとかが売っていたので行かなくなった。噂では、かじりかけのパンも売ってたと聞いたけど、あれは本当だったんだろうか。