昨日に引き続き季節の歌シリーズ。
まずはエルザの『T’en va pas』。
タンバパといえばサムシングなわけですよ。といってすぐにぴんとくる人はみな同世代。←雑すぎるくくり。
この歌を聞くとわたしはいつも晩秋を感じる。ひとことで言えば「パパ行かないで」という内容の歌だし、昨日のテテのA La Faveur De L’automneのようにとくに季節を感じる歌詞は出てこないにもかかわらず。
でも秋を感じる一因は、あのエドウィンのCMにもあるのじゃないかと思っている。フランス人の女の子が細身のジーンズをはいてパリの町を闊歩するあのCM。途中きゅきゅっとブーツをふいたりして。
現実のフランスという国はとりあえず横に置き、あのCMには、よくもわるくも当時の日本人が好きだったフランスがぎゅぎゅっと凝縮されている気がする。当時の、といっても、皆じゃないのは承知だし、人によっては”お”を国名につけて呼んでしまいたくなる部分でもあるんじゃないかと勝手に推測するけれど。「フランスの文化を好ましい目で見ている日本人の中にあるイデアのフランス」というか(なにそれ)。
タンバパはもともとは『悲しみのヴァイオリン』(1986年)という映画の主題歌として作られたらしい。観たことないんですよね。でも、上記Youtube動画も、エルザの見た目といい、曲といい、映画のシーンといい、まさにそんなイデアのフランスっぽい。いいなあ、このフランスにタイムスリップしたいよ。つまりわたしは完全に、”お”揶揄をはっ、はっ、と交わしつつ好き側にいる人間です。
そして、そんな晩秋をイメージしてしまうエルザバージョンに対し、カバー曲なのに引けを取らないもうひとつの曲が、大貫妙子の『彼と彼女のソネット』(※)。引けを取らないどころか、好きで好きでしょうがない曲。実は知ったのはこの曲の方が先だった。エドウィンのCMよりはるか昔。フランスを好きになるずっとずっと前。
そして、なぜか思い浮かぶ季節は冬。それも吐く息の白い凍てつく冬。
歌詞の内容はタンバパとはまったくちがう。あちらがパパ行かないで、だとすると、こちらはタイトルにもある通り、彼と彼女、つまり男女の歌だ。でもラブソングと紹介するのはいささかそぐわない、その範疇にない感じもしている。これもどこか抽象的というかイデアめいている。
先に知ったのがこっちであったことや歌詞や雰囲気がまったくちがうこともあって、わたしの中では旋律が同じでも、ちがう曲に位置づけられている。単体でそれぞれを好き。思う季節がちがうように、好きの源がちがう感じ。
ちなみに原田知世バージョンは、歌詞は『彼と彼女のソネット』なのに編曲がほぼ『タンバパ』という、わたしの中で混乱をきたすものになっているのでスルー事項になっている。悪くない、悪くないんだけどね。件の2曲があまりにも自分の中で確立されてしまっているのでね。
この2曲は定番を通りこしてもはや身の一部。この2曲が自分の人生に入ってきてくれただけで勝ったも同然だと思っている。←話を大きくしがちな人。←ていうか何に?
そしてこれから季節は晩秋と冬。幸せだ。
とほ
p.s.
「先日からフランスフランス言うてますけど、あなたインド好きといってなかった?」と思った人。インド対フランスの脳内内戦についてはまたそのうち記事にするとかしないとか。
※どうでもいいかもですが、私の好きで好きでしょうがない編曲はアルバム「A slice of Life」のバージョンです。