子どもの頃に持っていた特殊能力のこと。

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問わず語り

子供の頃の秘密は、だれでもひとつやふたつ持っているのではないだろうか。このことは話そうかずいぶん迷った。でも今日は勇気を出してみる。信じてもらえなくても構わない。子供の頃、ある特殊能力を持っていた。

目を閉じたまま、瞼を通して物を見る能力。目を瞑ったまま歩けて便利だった。家族でどこかから帰ってきて車の中で寝たふりをしている時などは、たいていはまず容赦なく起こされるのだけど、ごくたまに、やさしい気分だったのか、車から家まで父親が背負って運んでくれることがあった。普段と違う角度から見下ろす世界は不思議で愉快だった。特に階段を降りる時などは、一歩一歩降りる振動が背中から伝わってくるのを感じながら、不自然に高い位置から見える世界に前のめりに落ちていきそうで、なかなかスリリングだった。

大人になるにつれその能力はなくなってしまったので、今ではそれが事実だったのか夢だったのかわからない。なので、それ目を開けて見るのとどう違うのん、という突っ込みには応じない。よくよく思えば、瞼から透ける世界を見ていた感覚の記憶は確かにあるけれど、なんせ遠い記憶だ、実際には薄目を開けていたのかもしれない。そんな気もする。きっとそうに違いない。過去の自分を信じてやれないのはだれよりも今の自分らしい。大人にはなりたくないものだ。

とほ