出版体験記、長いよ、そろそろもういいよ……という空耳も聞こえてきているし、前回記事で「ありがとうございました」とさも大トリの演歌歌手のような空気を匂わせておいてまだ続けることに若干赤面もしつつ、自分が出した本に対する他人様の反応を知るという体験も出版していなかったらできなかったことだし、ここまで書いたのだから毒を食らわば皿までとばかりに書き記しておくことにする。
まず。出版する前から、読んだ人の感想については、それはもうその人のものであるので、良いものも悪いものもあることは肝に命じておこうとは思っていた。
加えて、編集者Eさんからも、すべての作業が終わった最終打ち合わせのタイミングで、「公表された作品については見る人全部が自由に批評する権利を持つ」というやりとりが描かれた藤子F不二雄さんのマンガの1ページ分のコピーを渡されていた。つまり、皆通っていく道だからね、という覚悟の促しとスルーのススメだったんだろうと思う。出版の規模にかかわらず。
2014年8月にXデーを迎えてから、自分の本がリアル書店に並んでいるところはまっさきに確認した。だってそれが一番見たい光景であったので。むふふ、とおおいに自己満足に浸るなどした。
同時に、Amazonに並んでいるところもやはり確認した。だって嬉しいじゃないですか、やっぱり。でもなんだろう、書店で実物を手にとるよりもオンラインの方が、キャッチコピーや説明にこっぱずかしさを覚えたのだけど、これって私だけなんですかね。
そして。そりゃね、どきどきしましたよ。レビューつくだろうかって。がしかし先に書いた通り、重刷ならずだった我が本。良くも悪くもレビューがつくことはなく、最初の数ヶ月こそチェックしていたものの、やがて見なくなっていった。
次に見たのは翌年の5月だったか。新しいコワーキングスペースを利用するようになっていて、オープン記念パーティに出席した時。その席でめずらしく自分の本の話をしたのもあって、帰宅して、お酒も入っていてちょっといい気分で、戯れにAmazonの自著ページを開いてみる気分になったんだと思う。
と。
あら。
レビューがついている。
がしかし。
星は2つ。
明らかに、この先キケン、立ち入るべからずのムードが漂っている。
……う、うんうん、だいじょうぶ、ほら、良いものも悪いものもあるからね(この時点で読みたくない)、ええと、なになに、
ごふっ。
まさか最初のレビューで血反吐はくとは思わなかった。そっかあ、これが私の記念すべきアマゾン初レビューかあ、でもまあそう思った人がいるのは事実だし、確かに散文詩と受け取る人がいるのもわかる書き方した、身に覚えはある、うん、認めます、でも、そうかあ、やっぱりあれあかんかったかあ、それにしても文体はともかく性格にまでだめだしとはな、なんでわかったんだろ……じゃない、ともかく、これが私の運命ってことだね……(遠い目)……今日楽しかったな……自著すすめちゃったな……あの人たちアマゾンみんのかな…………。
…………。
……………………。
………………………………。
ちえーーーーっ
ねるーーーーーっ。
そういうわけで、その日は布団ひっかぶって不貞寝したのだった。笑
まあでもね、ショックはショックだったんだけど、なんだろう、ものすごく正直にいえば、書き方に透けて見える人柄から、間に受け取りすぎるのもあれだなと思ったし、ぼろくそなのに星ひとつじゃないんだwとか、「性格に癖」の部分に関しては、これってつまり個性的ってことですよね?と、あさってな方向にポジティブな転換が起きるなどしており。血反吐はきつつ1ミリくらいおもしろがってたところはあるかもしれない。
でも、そういってられるのも数が少ないからで、これが山程だめだしレビューが来ていたら本気で凹んだんだろうけど。それを考えると、私のなんてたかが1レビューというミクロな世界、マクロな世界で期せずして炎上を起こしてしまった人のきつさは相当だろう。それ考えると私は有名になる器ない。
話がずれたので戻すと、ともかく、自分に関してはそんな感じで受け止められたけど、正直なところ、最後まで親身に尽力していただいた編集者さんに対するだめだしにまで及んでいたのは一番悲しかったし申し訳ない気持ちになった。本の内容に関しては、今でも読み返す機会があるたびに書き直したいところが目についてしまうくらい、未熟な部分があるのは確かだけれど、書いたのはあくまで私なので。まあでも、こういうことも含めてのあの漫画のコピーだったのだろう、と思うことにする。
そういうわけで、これが私の初アマゾンレビュー体験だったのだけど。
ネガティブだろうとポジティブだろうと、1年ぐらいかけてレビューが1つというのが反響を物語っているのであり、そのことは受け入れようとは思った。とはいえ何度も目にしたいものではないので、それきり、自著ページはのぞかなくなった。
といいつつ、数年後、また覗いちゃうんですけどね(困)。そりゃね、たまには、やっぱり、ふとね。そしたら、ある時、レビューがさらに1つ、ついていた。今度は好意的な感想が。それも、短いけれど内容を汲んでくださっていると感じるものが。
結局一喜一憂しとるやないか、という話なんですが。
いや、だって。うれしくないわけがない。
レビューを書こう、というのは、ちょっとした手間だと思う。よいレビューにしろわるいレビューにしろ、その人をして書くエネルギーを使うに至らしめる過程というのを考えさせられるし、書かれたものが著者に与える影響はやはりある。涼しい顔をしたふりをしていても。
だから。二番目のレビューを書いてくださった方。どなたか知らないけれど、あなたのそのひと手間のおかげで、救われた気持ちになった著者がここにいます。本当にありがとう。
とほ