星の旅人たちと行くサン・ジャックへの道 18日目:電子遮断の日。

※当ページには広告が含まれています※
※当記事には広告が含まれています※
サンティアゴ巡礼

 

5月10日 快晴

ワイファイの遅さに嫌気がさして、次の大きな町レオンでSIMカードを購入することにした。最初からそうしとけばよかったのだけど、実際スペインに入ったらしようと思っていたのだけど、歩くという主題と毎日のクタクタを前に、なしくずしになっていた。

今や誰もがスマホをもち、カミーノの道筋はアプリでチェックする、道中であった人と連絡先をその場で交換する、グーグル翻訳を使って会話する、ということがあたりまえになっているカミーノ2018。

スマホやネットの利用やそれに伴う電子的つながりについて、そういうものから離れるためにきたんだよね、という話は、歩く動機や目的をたずねあったり自己紹介しあう時には、ちらほらだれかが言い出すことではある。

それでも。SIMカードを数日後に得ようとしている身でも。
今日たどりついたベルシアノス・デル・レアル・カミーノというれんが色の小さい町はずれにある、寄付制の、電子的な設備が整ってない、つまりワイファイのないアルベルゲで(アルベルゲの言い分は「みなと語らうため」)、やけにひろいテラスで、鳥の声以外は音もなく(みな昼寝をしているのだろうか)、あたたかい日差しを浴びながら、ブログ更新や調べものをすっぱりあきらめて読書したりぼうっとしていると、静けさが全身に浸透していくようで、ワイファイだのみにしていたおかげで得られた電子生活の遮断に、よくわからない感謝を覚えていたりもする。

そうそう、そんな電波事情の中で今日は事件があった。

昨日会った日本人m、s、nさんと順に同じアルベルゲにつき、1時半にオープンした受付を順に待っていた時、数日前からアルベルゲで見知っていた韓国人夫婦の奥さんが飛び込んできた。だんなさんとはぐれたのだという。

テラディージョスからベルシアノスまでの行程にはちょっとわかりづらい分かれ道がある。12キロ地点にある大きめの町サーグーンを少し過ぎたところにある分岐点。どちらの道を進んでもマンシージャで合流するのだけど、大半は左の道を進む。両方の道の途中にあるアルベルゲで一泊する人が多く、ご夫婦は右の道にあるアルベルゲで泊まる約束をしていた。のに、奥さんは左を進んできてしまったようなのだ。

でもこれも、ようやくわかったことで、最初は、わたしの腕をつかんで韓国語で訴え続けるばかりで、とにかく何か困っているということしかわからなかった。

奥さんは英語がまったく話せず、そして、今まで絶対100パーセントと言い切れるくらいいた韓国人がその日に限って、そのアルベルゲに限って、いなかった。さらに、奥さんはだんなさんと連絡をつけたいのに、大体のアルベルゲにはあるワイファイがここに限ってなかった。

藁を掴む思いで同じアジア人枠のわたしたちのところにきたのだと思うけど、や、韓国語わからないのは、他の国の人と同じなんですよう・・・とはいっていられず、スマホの中にある画像のアルファベットが反対側の町の名前であること、だんなさんの姿が見当たらないことなどから少しずつ事情をのみこみ、さてどうするか、戻るしかない、でも分岐点からはそれぞれ4〜6キロある、歩いて戻るならまた10キロ歩かなくてはならない、絶対に歩けない距離ではないとはいえ20キロ歩いたあとで不安に思いながらまた10キロとか、絶対無理そう、わたしだってやだ、ということで、アルベルゲの人にタクシーを呼んでもらうにいたった。ここまではほとんど身振り手振りとわずかな英語のみ。

奥さんはタクシーを待つことになり、わたしとnさんも一旦ベッドに荷物を置きにいき、そこでグーグル翻訳があればねえ、という話になった。nさんはsimの入ったスマホを持っていた。グーグル翻訳の各言語のダウンロード簡単みたいですよ、と、わたしも人から聞いたばかりの情報を伝えるとnさんはすぐに設定してくれた。

下に降りるとタクシーが来ないとまた不安そうに訴えてきた奥さんと、今度はnさんのスマホを使って会話。その後の会話の疎通量といったら。30分でくること、向こうにつくのは20分くらいであることなどを伝え、ようやく来たタクシーで送り出した。奥さん涙ぐんでいた。いやもうすごいね、グーグル翻訳。時代だなあ。

電子遮断と電子利用のメリットの両方を感じた日でした、ということで、このだらだら話をまとめたいと思います。

もうひとつおまけ。

出発地から小一時間したところにある、上の写真。途中まで一緒に歩いていたデレクと、あれってホビット住んでそうじゃない?と話しながら近づいていったところ、下の看板が。

「や、ここホビット住んでないから!」。

笑。

考えることはみな同じ。ちなみに昔のワインや食料の貯蔵庫だそうです。

 

出発地:テラディージョス・デ・ロス・テンプラリオス(6:40出発)
到着地:ベルシアノス・デル・レアル・カミーノ(13:10到着)
歩行距離:20.5km

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの「フランス人の道」780km巡礼日誌。
「星の旅人たちと行くサンジャックへの道」とは、巡礼路を歩くきっかけとなった『星の旅人たち』と『サンジャックへの道』という2つの映画タイトルを合体させた旅タイトル。センスがよろしいとはいえないこの映画タイトル合体旅タイトルはブログ主が得意とするところらしいという噂(前科あり)。時に、星の旅人たち=ホシノ、サンジャックへの道=サンジャで略すことあり。なお、ロケ地巡りという性質を含む行程である以上、関連場所を通過する際に映画の内容に触れることがあります(ネタバレ宣言参照)。ラストにどんでん返しがあるタイプの映画ではないですが、ネタバレ過敏症の方は注意。