星の旅人たちと行くサン・ジャックへの道 25日目:鉄の十字架に置く石のこと。

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サンティアゴ巡礼

 

5月17日 快晴

実のところ、今日はくだりが多くていやーん、なんていってる場合ではない日なのだった。

だって、今日は、後半2つの難関の1つイラゴ峠を越える日。そして、イラゴ峠には、巡礼路としても重要な聖地であり、かつサンジャンピエドポー以降『星の旅人たち』と『サンジャックへの道』両映画の舞台が重なる鉄の十字架(Cruz de Ferro)と、これも両映画に登場するトマスのアルベルゲがある。カミーノ的にも映画ロケ地的にもある意味クライマックスの日。

昨日フォンセバドンまでのぼってきていたおかげで、そこから2キロ先にある標高1500mほどの頂上にある鉄の十字架には、朝の一番気持ちいい歩行時間に着くことができた。

鉄の十字架には、ペレグリーノたちがそれぞれの故郷から持ってきた石を十字架の根元に願いを込めて置くしきたりがある。ホシノでも四人が各自石を置き、十字架を静かに見上げるシーンがある。トムの石は、サンジャンで警部からこのしきたりについて聴き渡された石だったけど、もしかしてあれは息子のダニエルのものだったのかな。ともかく、わたしももちろん日本から持って・・・くる気は満々だったのだけどあっさり忘れ、でも石は置きたい、置きたいよう、というわけで、サンジャンを出発して数日たった頃に巡礼路の途中で石をひとつ拾い、ザ・三週間懐で温めて日本臭を染み込ます作戦に出た(は?)。だって、ほら、しばらく持っていれば自分の石化して日本から拾ってきたのと変わらない効果を持つんじゃないかなーなんて(は?は?)。

まあでも、背後から朝日が差す中、前方に鉄の十字架が見えて来た時は少しうるっときたけれど、ペレグリーノたちが入れ替わり立ち代り十字架の横に立って記念撮影しており、静かに祈るような雰囲気ではなかったな。自分でも半分苦笑ながらご丁寧に前日願い事まで書いたその石も、ささっと置いて、写真を撮って、という流れ作業のような感じだった。中には、鉄の十字架の小山のふもとあたりで石を拾って十字架の根元にぽいっと投げている人もいた。それに比べればわたしの作戦はまだましと思われる(根拠はない)。

このひとつめのクライマックスである鉄の十字架を過ぎ、さらに2キロちょっとを歩いたところにあるマンハリンという小さな町に、トマスのアルベルゲがある。ここもホシノ、サンジャック両映画で出て来る場所。アルベルゲの前の特徴あるたくさんの道しるべ、特に「サンティアゴまで222km」の標識がはっきりと映し出される。サンジャックでは、だめ三男がアルコールを求めてふらっと中に入りそうになるも長女に肩を抱かれてなだめられ通り過ぎるシーン。その時にアルベルゲの主人トマスと思われる人物も確かちらっと映っていたような。

実際に中に入ってみると、アルコール類が飲めるような場所ではなくて、ペレグリーノたちのためにコーヒーや紅茶やビスケットが置かれ、ロザリオなどのキリスト教関連のものやほたて貝やひょうたんなと巡礼路関連の売り物が売られていた。ちなみにここでもスタンプをもらえる。

さて、クライマックス二箇所を通り過ぎ満たされたあとに、延々なるアップダウン、特にダウンダウンひたすらダウンが始まった。最初のうちはあら?余裕じゃない?今日楽勝じゃない?と思っていたけれど、いやいや、いやいやいや。しっかり難関だった。波うつ岩盤で足をくじかないようにそろりそろり降りるしかない急なくだり坂が続き、最後なんて体感時速0.3キロくらいじゃなかっただろうか。へろへろになるのを予想して今日の歩行距離を短く設定しておいて正解だった。カミーノ協会の本には「あと8キロ歩く余裕があれば、ポンフェラーダまで歩こう」と書いてあったけれど、や、無理ですね、と心の中できっぱり宣言して、おとなしくくだりきったところにある町モリナセカのアルベルゲにチェックインした。

そこで会ったドイツ人男性二人と話していて。鉄の十字架に石を置いてきた?という話になった。ひとりは頭をふり、ひとりはもちろん、と答えた。日本から持ってきた?と聞かれたのでわたしも頭を振り、上記の作戦と、十字架のふもとで石を拾って頂上でぽいっと置いた人の話をした。すると、石を持ってきたと答えた方のペーターが、「どこで拾ったかは関係ないんだよ。石を拾い、十字架のもとに置くという行為に意味があるんだ。行為自体がシンボリックなんだ。人生の最後に善と悪のどちらの行いが多かったか裁かれるだろう、その時にこの石が善の方の重りになってくれるんだよ。キリスト教徒でもイスラム教徒でもそれ以外でも、宗教は関係なくね」と彼は言った。人生の最後に善悪の重りで裁かれる、という考え方自体はとてもキリスト教的だなと思ったけれど(そりゃそうだよね、だってここはキリスト教徒の巡礼の道なのだから)、どこで拾うかは関係なくて、石を拾い置く行為そのものが意味を持つ、というアイデアには、いいねをたくさん心の中でクリックさせてもらった。だってそうじゃないと作戦が。

 

出発地:フォンセバドン(7:00出発)
到着地:モリセナカ(14:00到着)
歩行距離:19.5km

 

サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの「フランス人の道」780km巡礼日誌。
「星の旅人たちと行くサンジャックへの道」とは、巡礼路を歩くきっかけとなった『星の旅人たち』と『サンジャックへの道』という2つの映画タイトルを合体させた旅タイトル。センスがよろしいとはいえないこの映画タイトル合体旅タイトルはブログ主が得意とするところらしいという噂(前科あり)。時に、星の旅人たち=ホシノ、サンジャックへの道=サンジャで略すことあり。なお、ロケ地巡りという性質を含む行程である以上、関連場所を通過する際に映画の内容に触れることがあります(ネタバレ宣言参照)。ラストにどんでん返しがあるタイプの映画ではないですが、ネタバレ過敏症の方は注意。