竹生島に続いて弁才天巡り、第二弾。
山口県美祢市にある別府弁才天池。
行ったのは2022年の冬、インドに渡る直前、北海道ゴールデンカムイ巡りの直後、実家のある下関から。
ほらわたくし弁才天ゆかりの地をめぐりがちなものですから、帰省中に実家から行ける場所にもないかと探しておりまして、まんまと弁才天の名を地図上でみつけてクリックしたらばまあ尋常じゃない美しさの池があらわれまして、なんだこの青はと。こんな場所が故郷にあったのかと。これは行くしかないと。
行くしかないといっても、ペーパードライバーん十年の人間ですから、山陰線沿いにある家から電車かバスで行く方法もいちおう調べたのですけどもめんどくさいこんなのドライブで行くのが楽しいに決まっている、というわけで妹を召喚して車で連れていってもらうことにしました。ありがとう妹よ。
平日の人の少ない日中の時間帯。駐車場から敷地内に入って目にとびこんできたのは、得も言われぬターコイズブルー。期待をはるかに凌駕する透明度。
波立ちのない鏡面ゆえか一層透明度が際立って見えます。
日差しの角度、眺める角度により青と緑の濃淡が変わるのがまた不思議。
途中から日が陰ったのですが、太陽の下、光とコラボした青と緑のコントラストもいいけれど、曇り空の下の落ち着いた色合いもまたなんとも情緒があってよき。
周囲の景色が映り込んだ水面もまた素敵。
同じ構図でも反映する空の色によって、まったくちがう色をみせるのがおもしろい。ターコイズブルー、コバルトブルー、エメラルドグリーン、どの表現もあてはまる。水深によるグラデーションに加え、池の底に点在する赤茶色の石がまたなんとも絶妙なアクセントになっています。
それにしてもなぜこんな色合いに?
この湧き水の色は、光の性質や水の中のミネラルが影響していると考えられているけど解明はされていないのだそう。
ちなみに池の底に点在する赤茶色は、石の表面に生長している「ベニマダラ」と呼ばれる藻類の一種で、清流の日陰でしか生きられず、とくに淡水性のものは準絶滅危惧種なのだとか。
見た目の美しさとともに、ベニマダラの存在にも裏打ちされた良質な湧き水から、日本名水百選にも選ばれているのだそう。いやもう納得。もちろん飲むこともでき、近くの給水所で汲んで持ち帰ってもよいのだそうです。隣接する鱒養殖場ではここの湧き水を利用してニジマスを養殖しているらしい。
そんな別府弁天池は、別府厳島神社の敷地内にあります。
別府厳島神社は、広島の厳島神社から分霊された無人の神社で、ご祭神はもちろん宗像三女神。その一柱である市杵嶋姫命(いちきしまひめのみこと)と同一視されている仏教の神様といえば、はい、そうですね、弁才天さんですね。
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三大弁才天巡り、最後の竹生島へ。
宗像三女神を祀る総本社、宗像大社へ。
江島神社で推し神様に会ってきました。
この地では、奈良時代、林を開墾しようと苦心していた長者が、夢のお告げに従って、弁財天を勧請して祭りや神楽を奏したところ、水が湧き出したという伝説があるそうです。
以来毎年9月上旬に、水の恵みに感謝し豊作を祈願して境内で「別府念仏踊り」が奉納されているのだそう。今では山口県の無形異形文化財に指定されているという念仏踊り。名称とともに、どういう舞いなんだろうと、とても興味を惹かれます。
近くにはかわいらしく七福神もそろっていました。
弁財天は、ごぞんじ七福神唯一の女神でもあります。
竹生島の記事でも書いた通り、弁才天のさまざまな姿の中でも私が推し神さまに(勝手に)しているのは芸術や学問、言語を司る神様としての二臂妙音天(=サラスヴァティ)なので、私は(勝手に)弁「才」天と書くようにしているのですが、七福神としてはやはり福の神様なわけですから弁「財」天がふさわしい気がします。
という余談。
関連記事:彦島ペトログラフと七神社めぐりの旅。
所在地 | 山口県美祢市秋芳町別府1591番地2 (美祢市養鱒場 TEL:0837-64-0203 ) |
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料金 | 無料 |
営業時間 | 24時間、無休 |
アクセス | 美祢ICから車で20~25分 もしくはツアーに参加 もしくは秋吉台を拠点にしてサイクリングで ※2023年の大雨の影響でJR美祢線が一部不通のため、2024年6月現在電車&バスでのアクセスは△ |
駐車場 | 無料 ※近くに売店、鱒の養殖場釣り堀、湧き水の給水所あり |
*環境省選定 名水百選 別府弁天池湧水
*名水百選 別府弁天池
*おいでませ山口へ 別府弁天池
*境内にあった看板
所要時間は、食事や釣り堀利用をしなければ30分もあれば十分でしょうか。私たちはかなりゆっくりしていたのですが、それでも1時間いたかなというところ。
その日の凍てついた冬の空気もよかったのか、巨木に囲まれた神社の境内の静けさも相まって、池周辺の静謐さを深く感じられた滞在でした。
そんなふうに満足度はとても高かったのですが、お昼をどこかで食べてそのまま帰るのはもったいない気がした私たち。地図上では別府弁天池から秋吉台まで車で20分程度の距離とわかり、カルスト台地まで足を伸ばすことにしました。
車窓から、時には車を停めて眺める壮大な景色は、端的にいって最高でした。冬枯れた景色がまたよく。スピード感のある雲の白と奥行きのある大地に生える石灰岩の白。
空は、青は青でも弁天池とはまた全然違う種類の青。弁天池がチベット産、中国湖北省産、メキシコ産あたりのターコイズだとしたら、こちらの空はさながらアリゾナ州のスリーピングビューティー。緑と青と地の色が入り混じった土着的なターコイズが個人的には好きだけど、まじりけのないスカイブルーもまた人生には必要なわけで…ってなんの話?
カルスト台地は、故郷を離れてひさしく、そう何度も来たことがあるわけではないけれど、久しぶりに来ると、やっぱり良い!となります。
高校生の頃、友達と来て彼女のおかあさんが作ってくれたお弁当を食べながらふたり静けさを味わったっけ。はるかな空を舞う鳶のぴーひょろろ、風の音、靴の下でじりじりと鳴る砂。そういうもろもろが今では心象風景化しているというか私の遠い形成材料のひとつになっている気がします。
おまけ。
帰り道、道の駅で出会った吉田松陰の顔がインパクトあるご当地ポテトチップス。ゆず塩味。
県花は夏ミカンだし全国有数の柑橘類の産地だからいいっちゃいいんだけども、山口県、なにかとみかん類で攻めがちw でも秋吉台で売ってるソフトクリームが夏みかん味なのはいいとして、ガードレールがみかん色なのはどうなのかと思うのよ。大学で外に出るまで、日本全国ガードレールはみかん色だと思ってましたからね。
まあでも、どうなのかといいながら、実はきらいじゃないです。注意を促す色ですし。いっそ全国みかん色にすればいいんじゃ。
と最後に郷土愛からくる暴言を吐いたところで終わります。