“昔あるところに1つの国があった。”
とある監督のとある映画について、あなたがもし好きな人であるなら、この一文だけでどの映画か恐らく説明不要と思いますし、この一文だけで多かれ少なかれ感情を揺さぶられるのではないかと思います。
“ユーゴスラビア, 映画, 監督”
あるいは、あなたがもしこれらのキーワードの組み合わせでこのページにたどり着いた人なら、やはり多くの説明はいらないのではないかと思います。
冒頭の一文で幕が開く映画、『アンダーグラウンド』。
その映画を作ったユーゴスラビア出身の監督、エミール・クストリッツア。
この監督の映画のロケ地とゆかりの地を訪ねることが、2016年夏のセルビア旅の目的でした。
説明するまでもないかもしれませんが、ユーゴスラビアはバルカン半島にかつて存在した国で、1990年代の相次ぐ内戦によりスロヴェニアの独立を皮切りに、クロアチア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、セルビア、コソヴォの7つの国家に分裂しました。首都であったベオグラードは現在セルビアの首都となっています。
という書き出しで始めましたけど、
物議を醸したこともあったようですが、私は彼の映画をプロパガンダだと感じたことはないし、
監督が自分をユーゴスラビア人と呼び、ルーツがそこにある以上、その背景が映画の中でしばしば重要な要素として登場ずるのは自然なことだと思うわけで、
私自身あくまで映画への興味や思い入れから派生した、ユーゴという今はない国と解体した後の現在の国々への興味なのであり、
そもそも純粋に旅先として見た時に、当該国のうちクロアチアには2010年の世界長旅中に行きましたけど、
その他の国は、行きたいのはやまやまだけど今回はすまん先を急いでおるので、と却下してしまう程度の興味であったことは認めざるをえず、
そもそもその頃、私がクストリッツア作品で観たことがあったのは監督の名前など意識せずに観た『アリゾナ・ドリーム』のみであり、
『アリゾナ・ドリーム』はほら、タイトルからも明らかなようにどアメリカな話ですから、バルカン半島のバの字もないわけですから、
ただその『アリゾナ・ドリーム』をひどく好きだったことが、その後のクストリッツア作品への関心の本格開花につながるわけで、
帰国後少しして手にした『黒猫・白猫』でいい加減機が熟した段階で『アンダーグラウンド』に出会いまして、はい完落ち、となった後にようやく舞台となった国々に目が向き始めた次第で、
つまりその、ええと、
この監督の特色を一言で表わせと言われたら、私にとって最初に出てくるのは、寓話の人、なのであります。
あるいはパレードの人。
あるいは魚の人。
さかな?
監督作を観進めると、動物、水中、花嫁衣装、楽団などなど、共通するモチーフが何度も出て来るのに気づくことになります。
今年の秋に満を持して公開された新作『オン・ザ・ミルキーロード』も、まあ見事に動物盛りだくさんで、日本語字幕がある映画はほぼコンプリしたしリピートもしている今となっては、何かもうほっとするというか、「おかえり」と言いたくなるレベルだったんですけど、
……それでね、『アリゾナ・ドリーム』にね、
出て来るわけですよ、アラスカの空を飛んで去っていく魚が。
え、そこで飛ぶの。というシュールなタイミングで。
というか魚飛ぶ話って聞いてないんですけど。
でも、あり、だと思わせられたうえ、
さっきバルカン半島のバの字もないって書きましたけど、去っていく魚とともに流れるイギーポップの歌う主題曲は、今思えばまぎれもなくクストリッツア節で、バルカン風味で、それもまた胸わしづかみ要素の1つであったのであり、
……『アリゾナ・ドリーム』についても話し始めると長くなるのでこのあたりで切り上げますけども、
つまりあの魚がすべての始まりだったと言っても過言ではなく、
クストリッツア道をそこからスタートして、次の『黒猫・白猫』という課程も私には大事なんですけど長くなるのではしょるとして、さらにその先に『アンダーグラウンド』という怪物が待っているとはまさか思っておらず、
『アンダーグラウンド』の騒がしくも心をざわつかせるあらゆる余韻を秘めた冒頭で魚が登場した時に、うっはー、となりまして、
ああん待って待って~~~と追いかけて、追いかけ続けた結果、気づいたらセルビアに来ていました。
おまえの記事がシュールやないか。
という空耳が聞こえていますが大丈夫でしょうか。
大丈夫な気はあまりしませんが続きます。
ジョニー・デップも個人的にはこの頃出ているものが一番好き。
というか某海賊以降の人気がよくわからん(爆弾発言)。