フォトグラファーの夢に燃え、恋に落ち、パリ生活を謳歌しているクリス。
のシーン。
Amelot駅、と書かれているのが見えますが。
住んでらっしゃる方、行かれたことがある方はご存じだと思いますが、Amelot駅というのはないんですよね。
結論からいうと、ここ、モンマルトルのアベス(Abbesses)駅だと思います。
『アメリ』の駅でも有名でしょうか。でも、というか、そっちの方が断然か。
『メトロランド』を最初に見た時、数度利用したことがある程度だし、改装もされているので、確信があったわけではないのですが、角度の感じなどからなんとなく、アベス駅っぽいなあと思っていました。
でも駅名、違う。
この、どうも名称をぼかしているらしい、というのが、この映画のロケ地探しを困難にした理由でした。
話をイギリス側の探索に戻しますと、IMDbにはロケ地として5つの場所が記載されています。そのうち4つがイギリス。ロンドン、バッキンガムシャー州アマーシャム(Amersham)、ミドルセックス州アクスブリッジ(Uxbridge)、同州のフィルムスタジオ。
残るひとつはフランスですが情報は「パリ」のみ。
それは、いったん置いておくとしまして、イギリス側。フランスに渡る前の若いクリスが列車のコンパートメントでたまたま同室になった紳士と会話を交わすシーンがあります。紳士は、脇に置いていた紙袋に目をとめたクリスに対し、「ウイスキーだよ、会社の人間がくれたんだ」と答えます。
「今日退職したんだ。何年も同じ会社に勤めてきて、だれも知らなかったのさ。私が飲めない人間ということにね。今日が最後だ、もうこうして通勤することもない」。そうして、メトロポリタン鉄道のかつての栄光、メトロランドでの生活について語り始めます。
「いつからメトロランドと呼ばれるようになったのか。いかにも不動産屋がよろこびそうな名前だよ。くつろぎの家、人のつながり、郊外で夢の生活を・・・その結果、今じゃ中流家庭だらけ。わたしもその一部さ、君だってそうだろう?」
クリスは答えます。
「ぼくはメトロランドになんか住まない。パリに行くんだ。写真家になる」
紳士は、最後に
「メトロランドは場所じゃない、心の在り方だよ」
と意味ありげなことをおっしゃって降りていくのですが。
このあと、紳士、クリスが目を離した一瞬に忽然と姿をけしてしまいます。現実的な物語ではあるのですが、この紳士のくだりだけファンタジー色が一瞬ふっと。
多分その「ふっと」が、紳士の言葉が象徴するものでもあるのでしょう、かつて存在し今はないもの、とらえどころのないもの、そういうノスタルジックでメランコリックな空気が映画全体に漂っていてとか、わかったふうなこと言ってみましたが、もちろん前ふりですよ。 ←長いから
イギリスでは、この駅に行こうかと思って調べていたのですが。
駅名。Mortimer Park、と読めます。
しかし、調べたけど、ない。そんな駅ないよー。
旧メトロポリタン鉄道についても調べ、列車のプレートに書かれた行き先(Baker Street)などからIMDbに載っていたうちのアクスブリッジくさいな、とあたりをつけたのですが、駅名が確認できず、ロンドンからも離れているしで、優先順位的にもばくちを打つのはやめました。
で、フランス側にロケ地をしぼりましたんで、冒頭のシーンがアベス駅かどうかを今回確認に
……行ってません。←をい
時間なかったの。汗。
じゃあなんでわかったかというと、以下のAmelot駅をずるっこしてグーグルアースで確認しました。帰国後に。
背景の建物などからアベス駅で間違いないと思います。場面かわってるので、中と外は撮影場所ちごてるよ、という映画ロケ地あるあるの可能性もないではないですが、記憶的には構内もアベス駅だと思います、うん。
この映画全体のトーン。
名称を変えることも含め、現実と微妙にリンクしないようにしている。としたら、意外によく練られた映画なのかもしれません。少なくとも、メトロランドというタイトルが内包するものを伝えることに成功している気がするから。
*
おまけ。
エミリー・ワトソン演じる現妻マリオンとランデブーの場面。
向こうに見えるのはノートルダム大聖堂ですね。
ここも……行ってません。
この映画で一番好きな場面。フランスに友人と遊びに来てボール遊びをしていたマリオンとこれも大聖堂の周辺と思われる庭園で写真を撮っていたクリスが出会うシーン。
ボールをカメラにぶつけられて怒り出すクリスに、気にするふうもなく、一緒にこない?とチャーミングに誘うマリオンに折れて、「Why not?」と。
それまでイギリス人同士なのにフランス語でどなったりとイキっていたクリスさんですが、このWhy notがね~、ツキモノ落ちた感じの声のトーンがねえ、いいのよお~~~。
……以上、行ってないロケ地の話でした。