その道を歩いている間、多くの時間をミズノ君とともに育てた子供と対話して過ごしました。
まずはミズノ君とのなれそめを話しましょうか。
ミズノ君とはお見合いでした。
長い道を歩くにあたり、パートナーとなり支えとなってくれる相手を探していたのですが、だったらミズノ君がいいんじゃないかしら、と人にすすめられ、ミズノ君に会うことになったのです。
仲介をしてくれた人は話し上手で、ミズノ君の魅力をそれはいきいきと語りました。わたしは大柄な相手が自分には合っていると思っていたのですが、話を聞いた仲介人はきっぱりと頭をふり、こういいました。今までのパートナーは大きすぎたの。小柄なミズノ君の方があなたにはあっているのよ。
確かにお見合いの場でミズノ君の印象はすこぶるよく、この人なら長い道のりを支えてくれるに違いないと、わたしはミズノ君とともに歩いていく決意を固めました。
ところが実際に歩き始めると、立ち止まっているときにはわからなかった問題が次々と明らかになっていきました。
ミズノ君は予想以上に小さかったのです。いえ、きっとみずのくんは悪くない。短期間、ともに歩くにはほどよく支えてくれる最適なパートナーだっただろうと今でも思います。多分、道が私が思っている以上に長すぎたのです。日がたつにつれ、わたしたちはどんどん合わなくなっていきました。ミズノ君の狭量さも、最初は気にならなかったのにしだいに私を苦しめはじめました。
加えて私はある秘密をかかえていました。ミズノ君と一緒ならきっと問題ないと打ち明けないままに歩き始めてしまった。わたしには子供がいたのです。それも狭く窮屈な場所が大好きな子供が。
ウオノメ。
もしこの先、見知らぬあなたがミズノ君と出会い、長い道をともに歩く決意をするなら反対はしません。実際よいパートナーだと思うからです。あなたがぐらついた時にはしっかり支えてもくれます。けれど、あなたがもし私と同じ秘密を抱え、出発前に少しでもいやな予感がするなら、いらぬお世話かもしれませんが、忠告したい。
ウオノメね、間違いなく育ちます。すっくすくと。とくに狭量なパートナーと一緒ならやばいです。
成長した結果、わたしを見て、わたしと話して、と激しく主張してきます。空を、大地を、山を、花を、風力発電の羽根を眺めるより、鳥のさえずりに耳を傾けるより、ペレグリーノたちと会話するより、わたしの相手をして!と。1日の後半はとくにぐずってきます。
カミーノで歩きながらもっとも対話した相手がウオノメだった、なんてことにならないよう、静かにしていてもらうよう対策を寝るか(クッションを多めにもっていくとか)、大柄なパートナーを選ぶかすることをおすすめします。
わたしたち以外にも道の途中で喧嘩別れしたのか、無残に打ち捨てられたパートナーの姿も見かけました。だから、ウオノメ持ちでなくても、長い道では多くの人が抱える問題ではあると思います。靴選びはほんにだいじ。
まあ無残に捨てられたのではなく、記念に(?)置いていかれたケースもあるとは思います。
わたしも、ミズノ君とは他にも合わないことがあり、サンティアゴ巡礼終了後は別れをつげて、残りの旅は新しいパートナー、テバさんと歩くことにしました。テバさんの開放感には随分助けられたものです。
ただテバさんも旅の相棒としては最高なのですが、ちょっとイージーがゴーイングすぎるので、安定感のあるミズノ君が懐かしくなっている今日このごろです。いろいろめんどくさいね(きみがな。
教訓。
とほ