東京九州フェリー、いい!(帰省往路編)

国内旅

帰省話、続きます。往路の話。

横須賀ー新門司間を結ぶ東京九州フェリーが、今年の夏2021年7月1日に就航することは、昨年末には小耳にはさんでいた。

横須賀〜北九州 東京九州フェリーが運航開始、7月1日
東京九州フェリー(北九州市)は7月1日、新門司港(同)と横須賀港(神奈川県横須賀市)を結ぶフェリーの運航を始める。所要時間は約21時間で、2隻の新造船を使って日曜日を除いて毎日運航する。
日本経済新聞より

 

これは帰省に使わない手はない。だって新門司港といったらあなた、実家の庭のようなものですから。 うそです。少し盛りました。なにせ実家があるのは山口県の下関。帰るには九州から電車で海を渡って本州に戻り、そこからさらに山陰方向にさかのぼらねばならない。うん、だいぶ盛ったね。

だがしかし。私が帰省時に一番利用するのは新幹線なのだけど、新幹線の駅である新下関は、自慢じゃないけど、こだま以外は余裕で素通りするし、のぞみで新横浜から広島まで行ってこだまかひかりに乗り換えるより、小倉まで一気に行って鈍行で戻る方が早いし楽だったりもする。なので帰省ルートとしては、感覚的に北九州市も下関市もたいして変わらない。なかでも門司と下関は、関門海峡を隔てた兄弟のようなもの。到着地が新門司港と聞けば、ああ、東京九州フェリーは私のために就航したんだな、と思っても無理はないと思う(ある)。

ちなみに飛行機で帰省したことは2度だけ、理由はやはり不便さ。早割りやマイルなどを使って安く済むメリットはあるものの、出発地(羽田)も到着地(山口県なら宇部、福岡県なら北九州か福岡)も、空港がうちからはんぱに遠いから。新幹線にはスルーされがちだし、わが故郷、いろいろと切ない。

まあでも、それ以外にも飛行機は、国際線はウキウキするくせに、国内線だと途端にすべてが慌ただしく感じるというのもある。搭乗前の時間が長いし、そのくせ乗り込んでもあっというまで大して何もできない。いや、何もしなくったっていいんだけど、移動所要時間をトータルで見ると新幹線と大して変わらないのに、全行程つぶれる感じがするのか、ちょっと損した気分になる。あんこがちょっとしか詰まってないたい焼きみたいだ。そこ行くと新幹線はガワが薄くあんこたっぷりだ。着いたらすぐ乗れる。乗ってしまえば時間をまるまる、読書なりなんなり好きなことに使える。長い移動時間が苦にならない、むしろ好きな人間としては、好きに使える時間が多いというのは大きなメリットだ。

前口上が長い。

ともかく。東京九州フェリーの話に戻すと、就航することを知った時点で、次に帰省するときはぜひとも利用したい、と鼻息荒くしていたものの、567禍が続いていたし、就航日である7月1日も緊急事態宣言下にあったために、まだまだ先だな、なんて思っていたのが、前回の記事で書いたように、感染者激減をきっかけに帰省を決めた。いそいそとサイトに直行して、チケットを取ったのは言うまでもない。

東京九州フェリー
「船旅ならではの風景がそこに」360度見渡す限りの水平線につつまれ、爽やかな海風を感じ深呼吸船尾に続く航跡と様

ちなみに乗船運賃は以下の通り。

*基本運賃*
ツーリストA 12,000円(期間A) 18,000円(期間B)*ルームチャージ料金(基本運賃にプラス)*
ツーリストS 6,000円(期間A) 7,200円(期間B)
ステート※ 32,000円(期間A) 38,400円(期間B)
デラックス 48,000円(期間A) 57,600円(期間B)
(※ステートウィズペットも同料金)

私が予約したのは、ルームチャージなしのツーリストA。ベッドのみの料金だ。取ったのは乗船の一週間前だったのだけど、金曜日の夜の便なのに余裕だったのは、ベッドの数の多さもあるだろうし、緊急事態宣言が解かれてまもなく、まだまだ移動する人が少なかったせいもあるだろう。でも、逆に思ったよりは埋まっているようにも感じた。

でもさ、12000円で東京から九州まで行けるって安くないですか? まあツーリストSも、ルームチャージ料を払ったとしたってプラス6000円で済むのだから安いのだけど。帰省復路のこともあったので、往路では、まずは試しにと基本運賃のみのツーリストAにした。

あとは、実際の寝心地がどうかということと、船旅の移動時間の長さをメリットと取るかデメリットと取るかだけど。

ここで再びあんこの登場である。人によっては21時間はさすがにあんこが多すぎる、という人もいるかもしれない。けれど、私は移動あんこは多いほどいいという人間だ。キャンプの時のように積ん読解消にあてたっていい。PC作業がしたければそれだって可能。WiFiが届かない区間もありそうだからがっつりネットをするとかはできないだろうけど、返って離れられていいかもしれない。

酔いやすいという懸念材料はあるものの、安定感のある大型フェリーである。天候さえよければ、黒潮にやられなければ、そして不穏な移動を伴う旅の相棒アネロン「ニスキャップ」さえいてくれれば、大丈夫、なんとかなる。はず。

そういうわけで、10月末の金曜日、港のある横須賀に向かった。ちなみに猿島に行ったのはこの日。

長く神奈川県民をやっているけど実は横須賀に行くのは初めてで、せっかくだから、前から気になっていた猿島にも行ってしまうことにした。それで早めに家を出……るつもりが身支度に時間がかかりすぎて、猿島行きの船に乗ったのはぎりぎりになってしまったのだけど(通常運転)。

横須賀から行ける無人島、猿島に行ってみた。
諸事情で横須賀に来る用があったため、以前から気になっていた無人島、猿島に行ってみることにした。 がしかし、諸事情で横須...

 

ともかく、そうして猿島に行って横須賀に戻ってきたのが夕方16時過ぎ。23時45分の乗船時間までにはまだまだある。日も暮れかけていたけど、街をぶらついてみることにした。

横須賀は、いわずと知れた米軍基地のある場所である。わかっていたよ、わかっていたけど、いざ来てみると、アメリカ人と思われる海外の方々が普通に歩いていて、おおう、と思う。しばらく旅に出ていないので新鮮。海軍バーガーなるものを食べにドブ板通りなる場所に行った時も、バーの中は西洋の人でにぎわっていて、ビリヤードをしている人がいたりして、普通に海外だった。

そんな感じで時間をつぶし、駅に戻ってロッカーの荷物を取って、再び歩いて15分程度のフェリーターミナル方面に向かう。

この時点で21時前。あれだけ時間つぶしたのにあと3時間近くある。あんこがはみだしている。ガワ(乗船後)の中身(滞在期間)は好きだけど、はみ出したあんこ(待ち時間)はちょっとだからおいしく感じる。多すぎるのは考えものだ。次利用することがあるとしたら、遅い時間に家を出ることにしよう、と思った。

そんなこんなでフェリーの待合室(反対側にはカフェもあったけど21時で終わり)で時間をつぶし、ようやく乗船時間に。右手に見えるエスカレーターをあがり、左手にあるゲートから船内へ。

さて、ツーリストAの部屋はこんな感じ。

昔のフェリーのような雑魚寝部屋ではなく、最近のホステルのドミトリーやカプセルのように、ベッドがしつらえてあってロールカーテンで仕切ることができる仕様。目隠しできるんなら十分、と、普段からバジェット旅に慣れている私は思ったのだけど、実際十分で、船内は他にも居場所はたくさんあるし、全然快適だった。

ロールカーテンを閉めれば、このようにプライベート空間は保たれる。

写真がなく説明も下手で申し訳ないけど、コンパートメント内は、基本的にベッドが向かい合わせの作りになっていて、端だけが隣が壁の一人空間となっている。友人や家族と一緒なら向かい合わせのベッドがいいだろうけど、私は一人なので、ロールカーテンを開けた時にお隣とコンニチワしないですむよう、端を選んだ(予約時に指定可能)。

でも、これはちょっと失敗だった。通路に面しているので、人の出入りがあるし、ドアがあいていたら、通路からがっつり見える。ドアを閉めたら閉めたで、人によっては開閉時に大きな音がする。そこがちょっと落ち着かなかった。複数あるツーリストAのコンパートメントのうち、1つだけ窓があるコンパートメントがあって、奥の端っこが取れれば、人の目はまずないし、プライべート空間はばっちり保たれるし、窓の外の海も眺められる特等席(ベッド)だ。予約時にわかっていたんだけど、取ろうとした周辺の日程はすべて埋まっていた。次は狙おう。

船内はこのように清潔で広く、さまざまな場所に腰掛けるところがある。上階からはデッキにも出られる。

 

ショップももちろんあって、お土産やちょっとしたスナックやおつまみが買える。

小腹が減った時用にカップラーメンもある。給湯器もある。

今回最大の失敗があるとしたら、お寝坊していて申し込み時間に間に合わず、季節限定の船上バーベキューガーデンでランチを食べ損ねたこと。

私は、食事は、朝ごはん用に買って入ったドーナツ2つを食べたらその後ずっとお腹がすかず、夕飯時も、親が帰ったら軽く夕飯を用意してくれているというので、なんだかこんなスナックみたいなピザしか食べていない。おいしかったけど。

レストランの写真も取り忘れた。各地の食材を使ったメニューが取り揃えられているし、値段も高くない。次は他の料理にしよう。季節が合えば、バーベキューも狙いたい。次乗る気まんまん。ちなみにコーヒーは、マシーンだけど、200円程度で飲める。

船内では、過ごす時間が退屈にならないように、プラネタリウムや映画など、あんこの味も複数用意されている。カラオケルームやエクササイズルームもあったけれど、567の関係で使用不可になっていた。これはしかたないね。

プラネタリウムにふらりと行ってみたところ、これが予想外によかった。天体の解説などはなく、地球や宇宙や自然の映像が移り変わっていくだけなのだけれど、船の柔らかい揺れもあるからだろうか、眠っているような変性意識のような状態になり、心地よく、終わったあとにとてもリラックスしたのがわかった。

さらに滞在中、最高オブ最高だったのが、

船上露天風呂。

写真がお見せできないのが残念だけど、貸し切りで大海原ひとりじめ。私が入った時間は青空が広がっていて、海は平らかで、透明なしきりの下から海風が入ってきて、ひたすらに気持ちよかった。

午後からは雲も出てきたけれど、全体にわたって海は穏やかだった。心配していた船酔いは、即効で酔い止めを飲んだ自分に突っ込みを入れたくなるほど、問題なかった。

とはいえ、横たわると揺れているのはわかるし、ずっと振動しているせいか、眠りは浅かったように思う。寝坊してしまったのはそのせいだ。でも他に何も予定はないのだから、寝坊しても何の問題もない。リラックスするしかない空間に、強制的に閉じ込められるというのもいいものである。

用意していた積ん読解消本も、最後まで読み切れはしなかったものの、ずいぶん読み進められた。大体は、船内のさまざまなところに置かれた椅子を移動しながら過ごしていたし、気が向けばふらっとデッキに出て海を眺めたり、部屋にいることはほとんどなかった。21時間、全然退屈しなかった。あんこ、ずっとおいしかった。

とほ

 

P.S.1
本物のあんこは、そこまでたくさん食べられない人です。

P.S.2
われながら右脳ぼんやりな感想という気しかしないので、もっと船内の様子を詳しく知りたい方は、Youtubeやnoteのこちらの方の記事など、的確に紹介されているものにあたってみてくださいね。

 

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