『パッドマン 5億人の女性を救った男』
原題:Pad Man
監督:R・バールキ
出演:アクシャイ・クマール、ラーディカー・アープテー、ソーナム・カプール他
公開:2018年2月(インド)、2018年12月(日本)
インドの小さい村で最愛の妻と暮らす発明好きなラクシュミは、ある時、妻が生理のたびに不衛生な布を使用していることを知る。薬局で清潔なナプキンを買って渡しても高額なため使い渋る妻を楽にしてあげたい一心で、ラクシュミは生理用ナプキンの自作を思いつく。失敗を重ねながらも改良を重ねていくが、周囲の理解を得るのは難しく、ある日、決定的な出来事が起きてしまう。聖なる川を穢したと人々から避難され、村を出ていくラクシュミ。それでも研究を続けるうちに理解者が現れ・・・安価な生理用ナプキンパッドを発明した男性の実話に基づく話。
日本公開からもう1年になるんですね。
観賞当時Twitterに投下した自分の感想。
女性の必需品の話だけど、立ち上がったのが女性ではこういう流れにはならなかったんだろう。どんなに障害があっても、最終的にインド社会で受け入れられるためには、発明は「彼」でなくてはならなかったし、媒介者は「彼女」「彼女たち」でなくてはならなかった。そして、映画が受け入れられるためには、愛の話でなければならなかった。同時に、この話と性別を根源的に切りはなして考えることはできないけど、性別とは別に、能力と能力の出会いの話でもあった。繋ぎ手の存在も要になっていて、それもぐっときた。
朴訥とした主演のアクシャイクマール、よかったです。後半のスピーチのあとで、大俳優に肩を抱かれて恐縮し、背中を丸めている姿がなんともよかった。
その主要ロケ地であるマディヤ・プラデーシュ州のマヘシュワールに行ってきました。
アーメダバード発の夜行列車でインドール鉄道駅に早朝到着、そのままオートリキシャで4.5km離れたバススタンドに向かい、6:55発の直通バスでマヘシュワールへ(※1)。午前中のうちに到着。バスが停まる幹線道路とガートのちょうど中間地点にある宿(Shree Ji guest house)にチェックインし、仮眠を取ったあとガートに向かいました。
宿から7~8分、幹線道路からは15~20分程度歩くと、目の前にナルマダ河が見えてきます。すでにこのあたりから、映画の中に出てきた風景がちらちらと。
マヘシュワールはインドに7つあると言われる聖なる川の1つ、ナルマダ河のほとりにあるヒンドゥ教の聖地。
聖地とはいえ小さい町で、ガート周辺に見どころが集まっています。ガートも端から端まであっというま。この規模のせいか、同じナルマダ河沿いにある聖地オームカレシュワールのようにかしこまった巡礼感はなく、私が行った時は旅行客はちらほら、大半は地元の人のようで、沐浴したり川を眺めながらおしゃべりしたりセルフィープリーズされたり(?)と、ゆるやかな時間が流れていました。
映画の中では、ラクシュミがこのガートを何度も自転車で行き来します。
ナルマダ河も重要な役割を果たしています。原作では違う地らしいですが、内容的に彼が飛び込むのは聖なる川である必要があったのでしょう。
ガートの中央にはフォート(城)に続く階段があり、城門をくぐった先にもヒンドゥ教寺院や民家があります。
で、中をぶらぶら散策しているうちに、ラクシュミたちの家(として撮られた家)を発見。
とにかく、あ、ここも、あ、ここも、と、ガート付近には映画の片鱗がいっぱいで、ロケ地的な充足感が得られやすい場所でした。私は、ガートとフォート付近ですっかり満足してしまったので、その他のロケ場所をみっちり探し出すことはしなかったのですが、徒歩で勝負できる規模の町だし、治安も悪くないし、この映画に思い入れがもちっと強ければ、町の中もこまかく探し出すのも楽しかっただろうなと思いました。
そうそう、パッドマン実話の舞台は南インドのようですし、因果関係はないのでしょうが、マヘシュワールでは道を歩けば薬局に当たるというほど個人経営の薬局がやたら目にとまりました。映画が映画だけに私の目がことさらに捉えているせいかもと思ったけれど、泊まっていた宿も1階が薬局で、聞くと実際薬局飽和状態なのだそう。理由はわからず。とはいえ、その薬局も、話している間ひっきりなしにお客さんがやってきていて、繁盛しているようでした。私もちょうど風邪を引きかけていたので、抗生物質と鼻の薬を買いました。
さて、マヘシュワールの次はマンドゥへ。
パッドマンは、スピーチが行われるニューヨークを除けば、撮影の大半はマヘシュワールで行われたようですが、MP州の他の地域でも撮影が行われており、その1つがマンドゥ。
マヘシュワールからローカルバスに乗り、ダムノッドでダール行きバスに乗り換え。ダールずっと手前のマンドゥに向かう三叉路のある地点で降ろしてもらい、そこからマンドゥ行きバスに乗り換え(※2)。朝9時にでて午後1時頃の到着。
手書きかい、というのはおいときまして。
マルワリゾートホテル。
のちの協力者となるパリーの宿泊先にラクシュミが「感想」を聞きにくるシーンが撮られたのがここ。マンドゥ中心部である宮殿地区の遺跡などがある場所から離れた、レワ貯水池方面に向かう道の途中にあります。
ただね。
ロケ地クエスト的には入り口だけ撮って素通り。はは。ははは。だって自転車でレワ貯水池の遺跡群に行く途中で、夕暮れ時だったし、ルプマティの離宮が閉まる時間が迫っていたんだもの。
ちなみに帰国後に確認したところでは、他にもマンドゥで撮られたシーンがありました。急に生理が来たことを察知したパリーのためスタッフがナプキンを探し回っているところにラクシュミ出くわすシーンも、Jami Masjidの看板が見えることから、マンドゥで撮られているようです。ジャーミ・マスジッドを含む宮殿地区の遺跡周辺がマンドゥの中心部で、バススタンドや商店や駐車場があつまっており、どんぴしゃ角度の写真はありませんがそのあたりの写真を投下。
ラクシュミが研究を続けているのはインドールのはずなので、マンドゥでばったり出くわすのはおかしいのだけど、そこは映画ロケ地あるある、触れるでないの領域ということにしておきます(※3)。
というわけで、ロケ地巡り欲はマヘシュワールでしっかり満たされたあとでしたし、この日風邪気味だったこともあって、マンドゥでのロケ地クエストは極めて残り香的なふわんとしたものになりました。
まあ、正直に言えばトホさんがマンドゥに来た理由は、
ロケ地巡りよりも遺跡、
遺跡よりもバオバブだったという噂。
みるからにのんびりとした田園風景に点在する遺跡のあいだに、マダガスカルのそれとはいささか様相が違うけれどまぎれもなくあのぶかっこうな愛すべき逆さまの木が突っ立っている写真が数年前ツイッターのタイムラインに流れてきて、こんなインド中央部の小さな町にバオバブがあるとは、ととても印象に残り、それ以来、マンドゥは次に行きたい場所リストの上位に入っていたのですよね。そのわりに滞在1日ってどうよ、ですが。
まあでも、また来ると思います。マンドゥは15世紀に栄えたマルワ王国の首都。マヘシュワールの見所がほぼガート周辺に集約されているのに対し、マンドゥはマヘシュワールより町の規模は小さいながら、遺跡が広範囲に点在していて見所は多い。バオバブ探索も日が暮れてしまってあまりできなかったし、次はもう少し長居してのんびりまわりたいな。
ただ、難は宿が少ないこと。あまり長居に向いた心地よい安宿はない印象だったなあ。
私が泊まったのは、マルワリトリートというホテルだったのですが、このマルワリトリート、撮影地として使われたマルワリゾートと同系列のホテル。
ロケ地巡り的にはマルワリゾートに泊まるのもありだったのでしょうけれど、事前に調べたホテル予約サイトのレビューが値段の割によくないし中心地から離れていて不便そうだったので選択肢からはずし、かといってバススタンド脇の安宿は選択肢に入れるには許容範囲以下で、ぷらぷら宿探しをしていたところ、バイクで通りかかった人に、うちはどう?と言われて連れていかれたのがマルワリトリートだったのでした。ただしドミトリーですけどね。300ルピーでドミ貸し切り。ふふふ。←いかにもバジェットトラベラーな喜び。
で、その通りかかった人というのがマルワグループの御曹司?君。実はマンドゥに着くまでにパッドマンの撮影に使われたのがリトリートとリゾートどっちか失念しており、その上諸事情によりネットが使えないという状況だったのですが、彼にリゾートの方であることを確認しました。他にも暇なのか町の歴史や遺跡について親切に教えてくれましたし、リトリートはツアリストインフォメーションセンターも兼ねているので、何も情報もたずに来た人はここくるとよいかもです(※4)。町おこしにも力を入れているらしく、2019年2月から王宮で毎晩イルミネーションショーを開催しているとのこと(ヒンディー語versionが19:00から、英語versionが19:40から)。うーん、やっぱりもう一泊くらいすべきだったなあ。
・・・パッドマンは、実はすごく思い入れがある映画というわけではなかったのですが、マヘシュワール、マンドゥ、インドールという土地に関して、書きたいことが多くて、だらだらまとまりのない記事になってしまいました。すみません。これでも減らしたの涙。
さらにだらだらした、どうでもよい補足。
※1 インドールに到着した時点ではマヘシュワールとマンドゥどっちに先に行くか決めてなかったのですが、早朝でも離れのバススタンドからなら直通バスがあるというのでマヘシュワールに先に行くことに決めました。ちなみにインドール駅のすぐ近くにもバススタンドはあります。そこからもマヘシュワール行き自体はありそうでしたが、時間帯によるのか、オートの兄ちゃんによる言い切りだったのかは謎。
※2 マンドゥの町の入り口の石壁が、機内でみた『Stree』に出てきた村の入り口によく似ていて、さらにはマンドゥにもStreeで出てきたようなとある悲恋の歴史が残っていることを知り、もしやロケ地!?と調べたら余裕で違ってました汗。違ってましたが同じMP州のボーパール周辺。Stree巡りもしたくなってきたじゃないか・・・って、なんてニッチにもほどがある補足というか自己満というか。
※3 ラクシュミが大学教授の使用人として働きながらナプキン開発成功のきっかけを掴む場所もインドールという設定。マヘシュワールやマンドゥに行く際に拠点となるインドール。私もインドール→マヘシュワール→マンドゥ→インドールという順に周遊しましたし、映画のロケもまさにこのトライアングル地帯で行われてたんですね。
※4 マンドゥからインドールの直行バスは、2019年9月時点で9:00と15:30の2本。私は9:00発のにマルワリトリートの前から乗りこみました。が、中間地点のダールで結構待つから、2本しかない直行バスにこだわらずダールに行ってそこで乗り換えた方が本数も多かった(ことに気づいた汗)。し、インドール近くで運転手が停めてあったバイクと接触事故を起こし、結局バス乗り換えとなったため、直行の意味・・・となりました。でもまあ、事故や故障や没収(?)によるバス乗り換えはインドあるあるですし、めんどくさいはめんどくさいけど、最近は人が亡くなってさえいなければ、はいはい、どのバスに乗ればいいんですかね?、と淡々粛々と対処するようになってます。
なお、マヘシュワールやマンドゥのその他の写真は、すべてのロケ地巡り更新が終わったあとにあらためて旅フォト編であげる予定です。