インド/パキスタン/インドネシア旅2019、ロケ地巡り更新。(旅程はこちら)
『聖者たちの食卓』
原題:Himself He Cooks
監督:フィリップ・ヴィチュス
制作国:ベルギー
公開:2014年9月(日本)
グル・カ・ランガル(Guru Ka Langar)は、24時間いつでも、宗教や人種を問わずすべての人を受け入れている500年以上続く無料の食堂。Langarは食堂、つまりGuru Ka Langarは文字通り「グルの食堂」の意味。スィク教の教祖であり初代グルであるグル・ナーナクによって始められたそうです。黄金寺院に入り、回廊に沿って左周りに歩いた側面に入り口があります。
Travel Guide/Sri Harmandir Sahib/World’s Largest Community Kitchen
食堂の音って独特だ。インドはどこに行っても騒がしい。だけど同じ音量でもここのは明らかに食堂のそれだ。一般の食堂とは桁違いに広大な、食に携わる場所。広大だからこそすべてが溶け合っている。わかりやすく金属がかちかち鳴っているわけじゃない、音と音がぶつかり相殺し合って角が取れ輪郭が緩やかなものになっている。互いに混ざり合い、もはや判別できない。できないのに、おかしなことだけど要素のひとつとして確実に食器同士のぶつかり合う音が存在するのがわかる。それから水の流れる音。配膳される音。人々の咀嚼する音さえも。混じり合い大きな何かになったものを感知する器官、すなわち耳が、足を踏み入れた途端に、ここは食堂だ、と伝えてくる。まるでドキュメンタリーの中にいるようだ。人の声すらも環境音の一部。
実はこの映画は帰国後に観ました。
音に関する上のメモは、まさに上記写真を撮った時、順番を待っているあいだに耳に届いた音に触発されて書いたもの。その後いただいた食事もシンプルながら充分においしく指で味わって食べたけれど、食事そのものよりもここで印象に残っていたのは私は音だった。ああこういう音ってドキュメンタリーみたいだ、とぼんやり思い、そうしてこの映画の存在を思い出したのでした。
公開当時も映画が上映されていることは知っていたけれど、基本的に前情報を仕入れないタイプであるのもあって、インドに関する映画という以外は内容は知らず、気づくと終わっていました。ただリーフレットの絵柄はぼんやり覚えていたし、ドキュメンタリーっぽいといえばぽい、タイトルもそんな感じだったなと。
それで帰国後に観たのですが、映画の中でもやはり印象に残るのは音でした。この作品に限らずドキュメンタリーの音って無機質なのになにか妙におちつくところある。ないですか?
グル・カ・ランガルは無料ですが、最後食器を渡して建物を出る時に寄付ボックス(巨大)が置かれているので、感謝をあらわしたいなら気持ちをそこに落とすのもありだと思います。と書いたけどするべきという意味ではないです。私はしたかったからしたけど、寄付はしたい人がしたい時にするのでいいと思う。
映画の中では、無料食堂だけでなく、黄金寺院内や周辺の様子も映し出されます。そのひとつとして履物を預かる施設も。黄金寺院に入る前には、靴を脱ぎ、窓口で渡して札を受け取り、黄金寺院を出てかえる時にそれを渡して靴を返してもらうというシステム。これも無料です。
旅中の靴の汚れについては、気づいた時はきれいにするようにしているのですが、インドではきりないというのもあって放置気味、靴磨き少年にもしょっちゅう指さされる女子的にあまりよろしくない状況。今回の旅で履いていた黒いウォーキングシューズは、10日間のパキスタン旅行を経て香ばしくもほこり高い白さとなっており、預かり所で渡そうとした時には我ながらさすがに赤面し、あとできれいにするから・・・と心の中で言い訳するなどしたのですが、戻ってきた靴はぴっかぴかに磨き上げられていました。
赤面倍増、恐縮至極。そんな捨て置けないほど汚かったんだ私の靴・・・。ですがこの映画で、預かり所の中でたくさんの靴を磨くおじいちゃまたちの映像が出てきた時に、ああ私の靴だけじゃなかったんだ、と安堵を覚えました。よかったよかった。ってちがう、そういうことじゃない。どなたか知りませんがありがとうございました。
旅先で訪れた場所を旅後に見た映画の中に発見し、しれっとブログネタとして使うこと。あるいはそのさま。