遠い。いや、心の片隅にはいる。常に。でも今はあえて横に置いている感じだ。例えて言えば、大事な試験を控えているので勉強に集中したいからしばらく会うのはよそう、と少しのあいだ距離を置くことに決めた恋人同士のような関係。
だって今は会えないのだし、あせってもしかたない。だから今は受験勉強をがんばることにしたんだ。心の中にはいつもきみがいる。でも今は勉強に集中したいから、少し、いやかなり、わきによせているかもしれない。本当いうと、勉強だけじゃない、今のうちにここでの生活を楽しんでおきたい気持ちもある。今までは地元のこと、出身地でありながら、ここに住んでいながら、きみのことばかり考えていたけど、最近はちょっと、なかなか、ここの子たちも悪くないじゃないかって再発見したりしているんだ。あ、でも浮気じゃないよ、なんというか、親友っていうか、幼馴染っていうか、心許せる女友達っていうか、わかるだろ、地元ってそういう感じなんだよ。と、とにかく、心の中にはきみがいる。そこは確固としている。だからこそ安心して離れていられる。どうせいつか一緒になるんだから。きみが待ってくれていると信じてぼくはがんばれる。
ていうか私、彼氏側なんだ。インドは彼女なんだ。ふうん、知らなかった。まあいい。
いつかは一緒になるんだから、と彼氏は思っているが、彼女は実は寂しくて心変わりするというパターンはよくある。
かもしれない。
しかしインドはちがう。
インドは寂しくなって逃げてしまうことがない。いつでもそこにいてくれる。だから安心して離れていられる。でも、インドは逃げない、というよりは、好きにすれば?と思っているだけかもしれない。そんな気もする。ちょっと寂しい。でもそんな放任が好きでもある。放任と受容のバランスにくびったけだ。よく知らない人はふしぎちゃん呼ばわりする人もいるけど、実は現実的で肝がすわっていること、ぼくは知っている。ああ、やっぱり会いたいな。
でも今は遠く離れた地で少し別のことをこなしつつ、いつか一緒になったときのために自分を整えておくから。再会した時には、今までよりも軽やかに動けるようにしておくから。きみはきみでどうか体に気を付けて。
インドは言う。
私は逃げないから。あなたのゴーサインがでたときに来ればいい。父(モディ)もそろそろ少し心(ビザ条件)ゆるめるようだし。まあ、でもまだ厳しいみたいだけどね。健康に気をつけて、時期を見定めつつ、それでも来たいなら来れば。そっちでいい子が見つかればそっちにいてもいいし。あなたの自由。とにかく私は逃げないから。
なんていいこなんだろう。インドは。
ま、まさか、きみ、そっちでいい人みつけてないだろうね。
とほ男