『フィッローリ~永遠の詩(うた)~』の舞台 in アムリトサル

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ロケ地-インド

 

インド/パキスタン/インドネシア旅2019、ロケ地巡り更新。(旅程はこちら

旅程としては前回の記事の舞台ゴアの次に行ったのはハンピでしたが、ロケ地更新としては一気に北上してパンジャーブ州アムリトサルへ。

 

『フィッローリ~永遠の詩(うた)~』
原題:Phillauri
監督:アンシャイ・ラール/Anshai Lal
出演:アヌシュカ・シャルマ、ディルジート・ドーサンジ他
制作国:インド
公開:2017年3月 (インド)、2018年10月(日本、IFFJ)

あらすじ
幼馴染と結婚するためカナダから帰国したカナンは、星占いで星回りが悪いと言われてしまい、親族が立ち会う中、厄落としのため樹木と結婚する儀式を行うことに。その日から木に宿っていた女の幽霊シャシがカナンの元にあらわれ…。

 


 

ホラー?いえいえ幽霊という役どころながらシャシ演じるアヌシュカ・シャルマがなんとも魅力的なコメディです。コメディ?いえいえ確かに出だしこそロムコム風なんですが、次第に明らかになるシャシの過去パートでは切なくも強いある絆が描かれていきます。

ストーリーの要となるのは、タイトルになっている詩人フィッローリ。フィッローリはだれなのか。

「永遠の詩」という副題には”うた”と読み仮名が振ってあります。これね、まったくなんという…いやもうその通りでですね……歌”うた”が心に響くには心に響く詩”うた”が欠かせず、詩”うた”が心に響くには心に響く歌”うた”が欠かせず…などとわけわからないことを書きながら涙腺が(困)。

過去パートに登場する歌手ループ・ラール役のディルジート・ドーサンジがはまり役。Bajaake Tumbaという劇中曲での登場の仕方には鳥肌たちました。グングルがシャンと鳴り、シタールを手に歌い始める。村娘たちは彼に夢中。パンジャブ地方のお話で、登場人物の多くがシク教徒であり、ゆえにループもターバンをしているのですが、ターバンの下に長髪という崩したスタイル、目元もぐるりとアイラインで取り囲んでいる。この時は軽薄そうに見えるのがまたよいのですよね。

初めて観た『パンジャブ・ハイ』でもよいなと思っていましたが、この映画で完全に好きな俳優さん入りしました。推しが多くてすみません。ちなみに、アヌシュカ・シャルマもヒンディ映画の中で一番好きな女優さん。お顔立ちは本来特に好みではなかったはずなのだけど、PK含めその後観る出演作も好きなものが多く、気づくとコケティッシュな魅力にすっかり参っていました。再び推しが多くてすみません。

というわけで、好きな俳優さんふたりが出ていることに加え、号泣必至だったこの映画、ロケ地巡り候補地のリストにインしたのは言うまでもありません。

さて、で、そのロケ地ですが、ラスボス的ネタバレに直結なので、この先注意です。

 

 

 

ディルジート・ドーサンジのコカ・コーラ看板でワンクッション。記事を読んでくださるありがとうございますな方々は基本、観賞済みかと思われなのですがともかく。

パンジャーブ地方の話と書きましたが、この土地が後半明らかになる史実と如実に関係しています。

 

 

 

 

 

 

 

Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.

シーン:シャシ、ループと「再会」する。

場所:ジャリヤーンワーラー庭園(Jallianwala Bagh)in アムリトサル

 

Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.
Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.
Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.
Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.
Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.

アムリトサル事件。

1919年4月13日、英国統治時代、英国軍部隊の無差別発砲によりインド人市民が虐殺された事件。それが起きたのがこのジャリアーンワーラー庭園。

ローラット法に抗議する反英集会が開かれていた一方で、バイサキ祭を祝うため多くの一般市民も訪れていたと言われており、わずか10分間の銃撃により、袋小路のように逃げ場のないこの場所で、女性や子供を含む大勢の人が命を落としました。

映画では、思いがけないきっかけから、この事件がシャシの過去に絡んでいたことが明らかになります。現代と過去でまったく関連のない中から、事件につながっていく流れは鳥肌でした。

Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.

事件から100年が絶ち、現在の庭園は観光客でにぎわい、重苦しい雰囲気はなく、慰霊碑の周りには代わる代わる記念撮影をする人々であふれていました。とはいえ、銃弾を避けるために多くの人が飛び込んだ井戸やおびただしい銃痕のある壁が残されており、生々しい現実であったことを伝えています。

 

Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.

Visited a film location of "Phillauri" in Amritsar.

この事件について今でもイギリス政府は認めてないようですが、昨年9月には英国教会のカンタベリー大主教が訪れて事件現場にひれ伏し、個人の立場で謝罪の意を伝えたとする記事をみつけました。

ロケ地巡りとしていわゆる負の遺跡である場所を訪れるのは葛藤がないというと嘘になるけれど、映画を観なければ恥ずかしながら私は知らない歴史でしたし、映画をきっかけにその地を訪れ、記事に書くためにもう一度調べることで、インドの歴史の一部がまたひとつ自分の中で根ざした気がしています。それがどこに向かうのかは別にして。

 

映画の話に戻すと、正直に言えば、最後のこの庭園での場面が一番涙を誘うクライマックスであることは理解しているのですが、実際泣いてもいたのですが、泣きなさい~い~という圧を若干感じなくもなく、一瞬ひゅっと冷静が顔をのぞかせたとか(汗)。しかし、クライマックスよりはむしろフィッローリを通したふたりの物語自体にどうしようもなく魅せられてしまっており、全体ではやはり大好きな映画です。できればぜひもう一度、日本語字幕で観たいなあ。一般公開されないかなあ。

 

アムリトサルで泊まっていた宿Osahan Paradise。4日滞在したのですが、窓の外に公園らしき空間があり、黄金寺院に近い中心部にありながら静かでよいなあ、と思っていたのですが、3日目の朝唐突に、あ、ここ庭園の真裏やん、と気づきました(遅い)。木が遮って記念碑がみえなかったのよ…。

 

この映画、2人以外も「おお!?」と思う配役で、現代パートで最終的に謎解き役となるカナンは、アン・リー監督作『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で主人公パイを演じたスラージ・シャルマ。ライフ・オブ・パイは映画も原作も大好きな作品で過去にポンディシェリでロケ地巡りをしました。フィッローリで思いがけなく再会。あのパイがすっかり現代っ子になっちゃってまあ。

あと厳格でありながら心ある印象深いシャシのお兄さんを演じたマナフ・ヴィジは、昨年一般公開された『盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~ 』でまったく違う雰囲気で登場していました。いやもうその違いっぷり、うける。こういう映画ごとの俳優さんの変貌ぶりも映画観にとっての醍醐味であることよ。死ぬほど好きな『盲目のメロディ』のロケ地巡りも同じ旅中にしたばかり。

それにそれにループ友人役のあの人も…いえ、このへんでやめておきましょう。インド映画でもロケ地巡りでも、道を進むほどに芋づるが長く太くなり、あっちに伸びこっちに伸びしてしまう、困ったものだ(困ってない。

 

映画の中では、アムリトサルですから当然といいますか、シク教の聖地である黄金寺院(ハリマンディル・サーヒブ)も出てきていました。

黄金寺院については次の記事であらためて。

 

宿Osahan Paradiseについて:静かな立地以外にも、部屋はきれいで天井は高いし、シク教徒のオーナーも親切で感じよく、従業員も控えめで感じよく、とても居心地のいい滞在でした。おすすめです。