Books are burning:焚書にまつわる音楽とか映画とか本とか。

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物語/本語り

三度目の緊急事態宣言。

4都府県、広範囲な業種で休業要請が出るようですね。1000平方メートルを超える店舗という線引きがよくわからないものの、映画館は普通にアウトとなり、仕事が詰まってて(あと進撃にはまってて)後回しにしていたクシシュトフ・キェシロフスキ監督『デカローグ』を観る機会を逸してしまい、泣いています。昨年から楽しみにしていたのに、私のばかばか。10話あるからスケジュールどうやって組もうと悩んでいるうちに。まあこれは6月に横浜シネマリンでもするようなので、その時には必ず。

クラスタ発生したことがない映画館も残念ですが、今回は、昨日の時点では書店も休業要請対象と耳にして、いや書店は対象外になったとか、古書店は対象とか実際の線引きはよくわかってないままですが、そんなわけで本日は、脳内にてXTCの『Books are burning』が流れておりました。

アンディのくぐもった独特な声質で歌われるメロウな曲調に乗せられた歌詞。気持ちがふさぐような、一方で本へのセンチメンタルな愛情に突き動かされるような。文字通り、焚書を扱った曲。いや、今回の措置を焚書に結びつけるのはおおげさですが。なんとなくね。気分。

 

 

というわけで、半分こじつけで、焚書にからんだ映画や小説について。

焚書といって真っ先に挙げられる本/映画といえば、レイ・ブラッドベリのSF小説『華氏451度』といっていいのではないでしょうか。ただ実は私これ、F・トリュフォーの映画でしか観てないのだけど。たしか本は読んでなかったと思う。なぜ「たしか」かというと、映画も本も両方あたることがあって、これも長い間本も読んだような気持ちになっていたけど、どうにも文章での記憶がないので。ともかく。

華氏451度は本が着火する温度。思想管理体制が敷かれた近未来、書物を読むことは一切禁止され、見つけしだい焼かれる世界。そのファイアーマンの物語。ずいぶん前に観たので内容はほとんど覚えてないのだけど、ラストが印象に残っている。日本人として耳がひっぱられる箇所があったせいか、よけいに。

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もうひとつ思い出す映画といえば、クリスチャン・ベール主演『リベリオン 』。原題はEquilibrium、これも設定は非常によく似ていて、というか半分パ、あ、いや、オマージュ・・・ともかく、感情を揺り動かす小説や音楽や絵画など一切の芸術を禁じられ、人の感情を「平衡」に保つ感情抑制薬で統治された世界を描いた近未来ディストピアもの。

リベリオンは、ガンカタも爽快だれど、個人的には、クリスチャン・ベール扮するクラリックが心を取り戻していく過程がたいへんに、もうたいへんにエモーショナルですばらしいので、みな観るべし(ファンの圧)。

あともうひとつ、焚書とは少し違うかもしれないけれど、ダイ・シージエ『バルザックと小さな中国のお針子』も。文化大革命下、当時中国で禁書となっていたバルザックを始めとする本を中心に語られる、山村に送られた都会の青年二人と「小裁縫」と呼ばれる少女の恋。これはのちに映画も観て、舞台となった山村は、海外ロケ地めぐり欲求が芽生えた頃のごく初期のめぐり候補地になりました。つって、中国、旅先としてはほぼ未踏のままですが。

これは、映画の監督・脚本も原作もダイ・シージェで、映画もよかったけれど、本がより好き。「観る」ではなく「読む」行為の方が、本、読書、物語の人への影響の重大さがより染み入る気がして。落ち着いた文体も好きだった。

バルザックと小さな中国のお針子

焚書は、どうしてもディストピアとセットになりがち。なのは、人間の自由の弾圧の象徴であり、焚書のある世界で人間が幸せに生きられるとは思えないから。本も映画も音楽も絵画も、心を動かすものを統制する世の中になったら、芸術を後回しにする世の中になったら、その色が濃くなったら、その時は、いよいよ世界はやばいのだろう。

とほ