ノート小話3:ノートは常に持ち歩いていた。

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問わず語り

 

ノートを持ち歩く。その必然性によって、誰に諭されるよりも前に、物心ついた頃から、いつのまにか、自然に。

そういう人は一定の割合で存在すると思っている。そこのあなた、そうでしょう?

私もそうでした。日記は続かないくせに、ふと思いつくよしなしごとを書き落とすノートは必需品だった。各教科のノート以外にノートを持つことはごく自然なことだった。頭の中に急に浮かび上がるそれをどこかにこぼすまで落ち着かないのだから、仕方なかった。救済策として必須だった。

ちなみに日記が続かないのは、降りてきたものを受け止めるのではなく、机にすわって書く時点で、別に机に座らなくてもよいけど、毎日の日課として向き直る記録という時点で義務感が生じてしまうからだった。扉が逆に固く開かなくなった。日記に対し気を使うというかへんにへこへこした文体で書いていた。楽しくもなかった。一方で持ち歩くノートは、なんかでてきたと感じた瞬間に出す快感めいたものがあった。なんだ💩か。💩だな。

ただ内面をさらけ出すという点では、毎日書かないだけの日記と同じなので、高校の頃、お昼休みにお弁当を食べたあと数人で話をしていて、ふと横をみると当時一番仲のよかった友達が私のノートを開いて読んでいるのに気づいた時は軽い死を迎えた。その子のことを書いていたわけではないけれど、気づいていない数分間、私の心の中は彼女にダダ漏れになっていたのだ。ノートの角に頭ぶつけて死にたくなった。

教訓:心の声だだもれノートは学校に持ってきてはいけない。

その時に学んだはずなのに、その後もノートを持ち歩くことはやめなかった。二十代になっても続いた。二十代後半になってもまだ持ち歩いていた。しょうがない、どこで落ちてくるかわからないのだもの。ふいに時間があいたときやカフェに行く時には本以上にノートは必須だった。

10代の頃はどこにでもあるようなB5サイズの薄いノート(気分でイラストついてたりついてなかったり)を使っていたけれど、20代に入ってAfternoon teaのA5サイズのノートを友だちにプレゼントしてもらってからは、気に入ってずっとそれを使っていた。

濃紺または黒地の中央に金で小さくAfternoon teaのロゴが入ったシンプルなノート。紙質といい、厚さといい、ページの罫線といい、途中から罫線がなくなるところといい、なにもかもが好きすぎて、廃盤になったことを知った時は悲しかった。知ったあとも往生際悪くお店に確認するなどし、たまたま行ったアウトレットパークで見つけた時は狂喜乱舞してまとめ買いした。・・・といっても持ち合わせがなく3冊分。その3冊が終わった時点でAfternoon teaノートとはお別れになった。計7冊。

その後、ノートジプシーがはじまる。モレスキンは私はなぜか合わなくて1回しか使ったことがない。最後まで書ききるうちに他のノートに移行した気がする。無印のノートも悪くなかったのだけど、やはり続かなかった。いいかも、と思えるノートに出逢えたら買うようにしていたのだけど、どこか座りが悪くおしまいまで使うということがなくなってしまった。どうしてもAfternoon teaと似た書き心地触り心地のノートを求めてしまい、どれもなんかちがう、となってしまう。新しい恋人に昔の恋人の面影を求めてはだめなんだよ。新しい彼のよい面に目を向けなくては。なんの話?

そのうちようやく380円ほどのマルマンのA5とA6のセプトクルールノートに落ち着いた。ノート1冊に使う金額はどんどん下がっていっていた。ノートに対するこだわりは随分なくなっていたけれど、紙質と大きさとシンプルさが気に入り、色違いで数冊購入した。10年前の長旅中も黄緑の表紙のこれを使っていた。ピンクの表紙はフランス語学習に、オレンジの表紙は株価のメモに使っていた。用途も増えていた。

で、今はどこに落ち着いたかというと。ダイソー。百均ですよあなた。でも最近の百均は本当ばかにできない(ばかにしてないけど)、黒い表紙のシンプルさとJetstream(あるいはHybrid gelペン)さえあれば全然いける紙質で、私の欲する必要最低条件を備えてくれており、旅でも惜しみなく使える、というわけで、今はここに落ち着いている。なくならないで欲しい。

でも、紙のノートに対する執着がなくなったのも、前記事に書いたように、電子メモがノートライフの中心をなすようになり、紙がメインではなくサブになりつつあるせいかもしれない。

Afternoon teaのあのノートが今でもあれば、私はまだ紙のノートに執着していたのだろうか。わからないな。多分それでもどこかでさよならをし、電子よこんにちはしていたんだろう。

とほ

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