カミーノ後旅日記:アルメリア〜セビージャ編

欧州旅


アルメリア。サンタモニカかマイアミかとみまごうような典型的なビーチリゾート地。

ただね。
興味ないんですよね、ビーチリゾート。水着持ってきてないし。そもそも着る気ないし。それでも到着日は、ビーチ沿いの遊歩道をぶらつき、飲み物1オーダーに対し好きなタパス1品が無料で選べる地域ということでレモン入りビールを飲みながらゆっくり過ごしたけれど、ここにきた目的は別にあった。

カミーノ後の旅先としてアルダルシア方面にしよう、というのはすぐに決まっていたのだけど、思い浮かぶ地名はグラナダ、コルドバ、セビージャあたりで、アルメリアは最初まったく候補に入ってなかった。ところがスペインで撮られたCB映画をおさらいしているうちに、とある映画のセットが建てられた場所であることがわかり、一躍トップ候補地に。他にも探るうちに、ウィキペディアにのっているスペイン国内で撮られた映画の数が突出して多いことがわかった。多くはマカロニウェスタンなど古い映画が多いけど新しい映画もあり、CB映画以外にもいくつか行きたい場所がでてきたため、リストに放り込んで出発したのだった。

ただ、調べていたのはそこまで。カミーノ中はカミーノに全集中を注いでいたし、その後の旅の具体的な行き方などは、到着直前または現地に着いてから、の行き当たりばったり方式。その結果、各ロケ地が離れており、交通手段も限られていることがわかった。バスはあっても本数が少ない。となると、一日ちょっとの滞在では行き先をしぼるしかなく、しぼるとなるとCBロケ地しかなく、というわけでタクシーを交渉して『エキソダス 神と王』の特大セットが建てられたSierra Alhamillaという山間へ。まったく、ザラの15€Tシャツは買い渋るくせに、ロケ地行って帰ってくるだけのタクシー代35€はさらっと出してしまう、このロケ地オタク体質よ。

ロケ地の詳細や写真は帰国後あらためて。
どんぴしゃロケ地に行けたことでマドリッド近郊旅で停滞していた旅テンションがややあがり、あがったところで、次の町グラナダへ。

アルメリアに下ってくる列車の中でも、窓の外に見える山々が、緑か雪に覆われていた北部のそれと明らかに異なり、褐色の山肌があらわになっていて、徐々にその兆しに浮き足立ってはいたのだけど、グラナダに到着し、中心部のホステルまでの道を歩いている途中でかすかにスパイスのにおいを嗅ぎ取ったあたりでいよいよイスラム文化の混入を感じとり、アルメリアで持ち直したテンションがさらにあがった。移動型の旅先で、アラブ要素が混じりはじめると、どうもテンションが自動的にあがるみたいだ。旅情という言葉において、あの匂いと音の独特さはまちがいなく一役買っていると思う。(グラナダではまだ音、つまりアザーンはなかったけれど)

さらに。個人的にもっとテンションがあがるのは、異なる文化の混じり合いに触れた時。
翌日の町歩きでもスペインとアラブ両文化をがっぷり堪能し、グラナダを満喫。グラナダのあとはコルドバで数時間町歩きをし泊まらずにセビージャに向かった。

で。グラナダ、コルドバ、セビージャの三都市では、入場料のかかる観光名所は一点集中型にして、それぞれアルハンブラ宮殿、メスキータ、大聖堂をみたのだけど。結果、一番好きだったのはコルドバのメスキータだった。
アルハンブラ宮殿は、運よく前日にチケットが取れたことで自分の中で若干価値があがったものの、実を言えば宮殿にはさほど興味なく半分こなし観光、世界有数のセビージャの大聖堂も確かに見応えはあったけど、大聖堂自体は結構いろんな都市にあるしいちいちみてられないというかやはりそこまで興味ないというか、そもそも今回は個人的経験的にサンティアゴ・デ・コンポステーラという圧倒クライマックスが記憶の中に鎮座しているため、うん、はい、了解です、という・・・ああごめんなさいごめんなさい。

一方、メスキータは。もともとイスラム教のモスクだったものを教会に転用した、という程度の前知識のみで中に入り、入った瞬間目を奪われた。ロードオブザリングに出てきたドワーフの巨大地下都市を一瞬思い出す回廊。すぐに目に飛び込んでくるのは独特な柱の赤白アーチ群。灯りはモスク仕様。建物中心部には祭壇、そこは圧倒的キリスト教の教会仕様。天井はモスクパートと教会パートのミックス。モスクらしい紋様のすぐ隣にキリスト教会特有の宗教画がかかっていたりする。教会にあってこそ自然にうつる宗教画が明らかにキリスト教会と異なる建造物内にあるミスマッチ。融合、という言葉を使うには分離しすぎている2つの文化が同じ空間にある妙味。作り替えるのではなくそのまま転用した結果、奇異なんだけど、規模がすごいので逆に目が奪れ、わーわーなにこれすっごいおもしろいんですけどー、と終始心でつぶやいていた。オーディオなどの説明がなくても、建造物自体があまりにユニークなので、みたあとで自発的にその背景を調べたくなるパターン。
イスラム勢力にかつて支配され、のちにキリスト教が奪還した歴史をもつアンダルシア。やっぱりおもしろい。来てよかった。

その他、セビージャでも町歩きは楽しく、中でもスペイン広場は『アラビアのロレンス』のカイロのシーンが撮られた場所ということもあって、セビージャでは個人的に一番好きだった。

※現在、モロッコにおります。セビージャ〜タンジェ(スペインからモロッコへ)編も今日明日にアップ予定。