人間ケプラーにであう。

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物語/本語り

さて、自分が作り出したと思っていた屋号『惑星ソムニウム(planet somnium)』が実在する惑星であることを知り、さらにはかの天文学者ケプラーの小説のタイトルに由来することを知った、というのが前回までのあらすじ。嘘です、前回というか下の記事ね。

この星は前にも来たことがある。
2023年4月追記:本記事はnoteからの移行記事です。noteでも『惑星ソムニウム』を使用していました。 ブログ...

記事にしたことで、そのオリジナル小説を読むべし、という啓示(という名の妄想)がおりてきたため、読むことにした。

それで図書館で借りたところ、受け取った本はそこそこぶあつく、時間をかけて読むことを覚悟した。ところがふたをあけてみると、本編はたった23ページ。とても短い小説であっというまに読み終わってしまった。

ケプラーの夢 (講談社学術文庫) 

 

【ヨハネス・ケプラー】
ドイツの天文学者。1571年生まれ。「惑星公転の3法則」を発見し、コペルニクスの地動説を発展させ、ニュートンの万有引力発見の基礎を作った。1630年没。引用元:Amazonの著者紹介欄

簡単にストーリーを言うと、主人公ドゥラコトゥスが母が精霊から聞いたという惑星レヴァニアに行くまでがまず語られ、次の章で精霊によるレヴァニアの解説があり、さてこの先どのような展開に?となったところで、夢おちかーい・・・という感じ。夢おちかーい、ってそもそもタイトルそれなんですけど。ともかく。

じゃあなぜ本が厚かったのかというと、本編の4倍はあるケプラー本人の注と、2倍はある翻訳者の注と図解。訳者の注が多いのは昔の小説ではとくにめずらしいことではないけれど、本人の注が本編の4倍って。

私は、作者本人の注は、映画の監督のコメンタリーにも似ていて、創作秘話をのぞけるおもしろさもある反面、注をつけすぎるという行為にも、注をすべて確認するという行為も、正直にいえば、無粋と感じる部分もある。できれば本編だけを堪能したい方。

ただ、あっという間に読み終わったといったけれど、天文学の知識のない私には、理解という点ではその助けを借りないと何が何やらだったし、翻訳者の図解もあわせて、確認することなしには、主人公が精霊に連れて行かれる惑星「レヴァニア」が月を、「ヴァルヴァ」が地球を指しているらしいこと、レヴァニアの2つの半球(スブヴァルヴァとプリヴァルヴァ)や周期や「食」の説明やヴァルヴァとの位置関係など、さっぱりわからなかった。

だから、それだけの注があるのも納得ではあり。実際、この小説を書いたのが小説家ではなく、中世に天文学的発見をした学者であるという点でも、これはもう注まで込みで「読み物」とみるべきなのだろう、と思った。

それに。注は、理解を補足するだけでなく、純粋におもしろかった。ガリレオやコペルニクスとの関係性だったり、学説に絡むあれこれが垣間見られるのもおもしろかったし、なんというか、ケプラーのぼやきというか、学説をだめだしされてむかついたとか(とほ解釈)、小説の中に突如訪れた数字や名称はすべて注で説明されるのだけど、その名称を思いついた理由(なんで思いついたか忘れちゃったんだよねー、みたいな「それいる?」という情報も含めて)などがことこまかに書かれていて、読むうちに非常に人間くささを感じてしまった。

そもそも小説書くあたりが人間くさいよね。もともとは神学者になろうとしていたらしい。それがコペルニクスの太陽中心説(地動説)に出会い、天文学者を志すことになったのらしい。

今まで教科書にでてきた名前、くらいの認識だったのが、この本を読んだことでケプラーが私の中で生きた人間になった。

あと、注のことばかり書いたけど、小説も、起承転結の起あたりで終わった印象はあるものの、大好きな稲垣足穂を思い出しもして、好きなテイストだった。

なんでも中世にかかれたSF小説の祖とも言われていて、ジュール・ヴェルヌやH.G.ウェルズに影響を与えたらしい。

精霊に連れられて月に渡る描写とか、少しニヒリズムの効いた感じも含めて秀逸です。レヴァニア人とヴァルヴァ人、精霊とデーモンの話、もっと読みたかったなあ。

とほ

p.s.
実は昨日の記事の書き込みの多い本というのはこの本だったりします。↓

図書館の本に書き込みをする行為。
本に書き込みをしてはいけない。 所有している本には好きなだけすればいい。実用書の読書術などでは推奨しているものも見かけ...

さらに。ケプラーの業績や経歴についてわかりやすくまとめられているサイトをみつけたのでこれもはっておきます。

ケプラーのあなたが知らない5つの事実!「ケプラーの法則」を唱えた天文学者
天文学者として、時には数学者として、今では常識となっている様々な事柄を発見をしてきたことで知られているケプラー。今回はそんな彼の発見について、そして彼の生涯について分かりやすく知ることのできる本をご紹介します。