Ⅳ.コネもなにもない人間が旅の本を商業出版するまでの話。

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本を出版した話

その4. 連絡が来た日。

ものごとが動く日にはそういうムードが伴うものなのかもしれない。

宝くじなんかはそういうムードの日に買えばいいんじゃないかと結構本気で思っている。なかなかそううまくはいかないけれど。というか宝くじ当たったことないですけど。

ものごとが動く日と自分のムードとの関係性。さらにはそのムードとリンクするできごととの関係性。結びつけているのは私であり、根拠はない。根拠は、自分がそう感じた、ということだけだ。だから、気のせいでしょう、と人が言ったとしても、そうかもしれないです、としか言えない。

ええと、これ、出版の話の続きですよね。

2012年、長旅から帰ったあと、紀行本の出版に向け、自分の思いついた方法に従って、せっせと出版社に原稿を送る生活を続けていた。けれど内面の葛藤に対峙するはめになり、向き合った結果、旅の本の出版はきれいさっぱりあきらめることにした、というのが前回までのあらすじ(いきなりストーリー仕立て)。

原稿も書き上げたし、出版社探しも売り込み活動もトータルで見れば結構な労力であったとは思う。けれど、突きつけられた問題に対峙したあげくに納得して出した結論なので、自分でも驚くほど悔いはなかった。むしろすがすがしいほどだった。大量に残っていた送り用原稿を段ボールにいれてクローゼットに仕舞い、旅本出版プロジェクトは封印した。そうして1年が経った。

また唐突に話が飛ぶ。

伊勢神宮には今までに三回参拝したことがある。御祭神天照大神の他に、内宮域内にお気に入りの神様がいる。といっても泊りがけで行って内宮外宮をしっかり周った一度目の時に、お参りしたらとても気持ちのよい場所だと感じたので、私の神様ということにしようと勝手に決めただけなのだけど。そういうの、私たまにある。根拠もなにもあったものではない。ただそういうことにしただけだ。

それで、二度目にお参りした際にも、その神様に挨拶しようと決めていた。ただ二度目の時は日帰りで、しかも名古屋からのバスは交通渋滞に引っかかってしまって、十分にまわる時間はなくなり、内宮に絞ることにした。慌ただしくはあったけれど、返って迷いなく、正宮をきちんとお参りしたうえで、別宮のその神様のもとに向かった。お願いごとはしていない。ただご挨拶しにいっただけだ。そういうお参りの仕方、私はよくする。

慌ただしいお参りにもかかわらず、その一連の流れのすべてがなにかゆるやかに楽しかった。自分の内側も全体的によいムードで満たされていた。そのムードを保ったまま、自宅のある横浜に帰った。

1年前に原稿を送った出版社の1つから連絡があったのは、その翌日だった。

とほ

 

 

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