小説の内容はもううっすらとしか覚えていないのに、冒頭の章が好きすぎて冒頭だけ何度も読み返している小説がある。
トム・ロビンズ『カウガール・ブルース』。
大きすぎる親指を持って生まれたために、天職のようにヒッチハイカーとなったシシー・ハンクショーの物語。
ちなみにこの小説は、ユマ・サーマン主演で映画にもなっている。キアヌ・リーヴスのファンであった頃に、というかキアヌのことは多分一生好きだし今ではキアヌは天使だから皆が好きにちがいないと信じこんでいる痴れ者なので言い直すと、キアヌに堕ちたてほやほやの頃に手当たり次第に出演作をみていてこの映画にも出ているのでみようとしていたのだけど入手できなかったんだかなんだったかで結局みていない。←この情報何?必要?
それにしてもあらためて出演者をチェックしてみたのだけど、シシー・ハンクショーの相方となるボナンザ・ジェリービーン役はレイン・フェニックスだったのね。リバー&ホアキンの妹。だったのね、といっているけれど、ガス・ヴァン・サントにキアヌ出演、だからさもありなん、知っていて忘れていただけな気もする。どうだろう。←この情報も必要?
小説の話に戻す。
小説は、映画を知った随分あとに読んだ。いつだったろう。長旅(2009~2011)後だったか。多分そうだと思う。確かブルース・チャトウィンの『ソングライン』と同じくらい、旅後に、旅に関連する本をよく読んでいた時期があったから、多分その頃。
嫌いではなかったと思う。でもなにしろうっすらとしか内容を覚えていない。ということは、そこまで残る小説ではなかったのかもしれない。と書いたけど、今みると2段組厚さ約2センチの本にドッグイヤーしまくっている。とくに後半部分。ということは、本文中に刺さる箇所がたくさんあったのかもしれない。でもなにしろ覚えていない。多分、冒頭ばかり読んでいるせいだ。開いた時点で序文に心奪われてそれ読んで満足してしまい、そのさきは読み返す気にならないせいだ。
(未読で冒頭を知りたくないというかたはここで回れ右プリーズです)
この小説の序文は、次のように始まる。
アメーバは化石を残さない。アメーバには骨がないからだ。(歯もないし、ベルトのバックルもないし、ウェディング・リングもない。)だから、アメーバがどれだけ長く地球上で暮らしてきたのかを、決めることは不可能である。
もう一度言うが、この小説の主人公はヒッチハイカー、シシー・ハンクショーだ。しかし、序文にいきなり登場するのはアメーバである。
「アメーバは分裂によって際限なく繁殖するので、すべてを次に伝えていき、失うものは何もない。」から「最初に誕生したアメーバは、今でも生きている」という。そして、最初に誕生したアメーバが媒体に運ばれてどこをどのように旅するかが語られていく。そして次の言葉で締めくくられる。
そのほぼ完璧に近い性的緊張の解決方法のみならず、ヒッチハイカーとしての熟練の技を讃えて、(アメリカシロヅルではなく)アメーバをここに『カウガール・ブルース』の公式マスコットとして任命します。
そして『カウガール・ブルース』は、それがどこにいようとも、最初のアメーバにハッピー・バースデイを言いたいと思います。ハッピー・バースデイ・トゥ・ユー。
なんと、アメーバなんである。
この小説の公式マスコットが。
というかこの章のタイトルがそもそも、単細胞の序文、である。おかしいでしょう。
しかし単細胞な私はあっけなく持っていかれてしまった。だって、短いこの序文にカウガールブルースのすべてが詰まっている気がするから。序文を読めば、これから起きること、この小説全体のムードがわかる。最初の一行から最後の一行までの間でアメーバの有史以前からの旅程を肌で感じ、読み終えた頃にはなんならもうすでに『カウガール・ブルース』の長い旅路も終えたかのような気分にさえなっている。だから多分、序文を読んだら本文はもう読まなくていいんだと思う(暴言)。
でも、自分がつけたドッグイヤーに気づいてしまったので、今はちょっとそれを知る二度目の旅に出たいような気もしている。けれどまあ出ないだろうな。なにしろ2段組厚さ約2センチ。ずるっこして映画をみちゃおうかな。でも映画には単細胞の序文がついてない。困った。
ヒッチハイクといえば、過去にロケ地巡りの一貫としてイギリスでトライしたことがある。以下に記事を投下するので、よかったら。
そうだ、下記記事にシシー・ハンクショーの名前出してた。だから読んだのは多分2011年の長旅帰国後から2013年のこのイギリス旅までの間だと思う。
とほ