ひとり旅。それから旅で出会う人のこと。

ひとり旅のメリットのひとつは、ひとりの気ままさもある一方で、逆に人と出会いやすいというのもあると思う。

海外でまわりにだれも自分を知っている人がいないという状況を心細く思うより心地よく感じるタイプはまあまずひとり旅を好むと思うのだけど、つまりそもそもの体質が団体より個人行動の人なわけで、ご多分に漏れず私もそうである。基本的には内向人間なので、出会う人々がグループであればまずその中に入って行きたい欲求がないし、相手が一人であっても「旅の仲間!」「人が好き♡」みたいなのりで話しかけることもない。

ただ、タイミングとか、空気がそんな感じだったとかで、石をこちらから投げることもあれば投げられることもある。こちらから投げても投げ返してこなければ、それはそれでありだしそのままおひとり享受に戻ればいいだけ、でも反応があって心地よく会話できる人は、名前も知らないうちからいつのまにかかなり深いところまで話し込んでいる、みたいなことがおきがち。私だけではないだろうけど、もしかしたら得意な方かもなと思うことはある。

3泊4日関釜フェリーでいきあたりばったり釜山の旅。
故郷下関を拠点にした旅シリーズ、しつこく続きます。ほら、リアル旅がおあずけである今、ネタは過去にあり、ですから。そんな文...

例えば、上記記事に書いた関釜フェリーの船室で出会ったミナさんとは、その日の夜半には何か非常に長年の友人のような空気や声のトーンで話しているな、とは感じていたけど、実際に近くにいた四人女性グループの一人に、一緒なの?と尋ねられ、否定すると、ですよね、あんまり親密にみえるから、と言われ、ミナさんと二人で顔を見合わせた。数時間でどうやってそうなるの?と方法まできかれ、気づいたらこうなってたとしか、みたいなことがあった。

でもこれは、乗船に際しちょっとしたアクシデントがあり近づくきっかけがあったのと、あとは相性とか、ミナさんがキップのいいねえさんタイプだったとか、同世代で母校を互いに知っていたとかで、いつもより近づく速度が早かったというのはあると思う。

といっても、私も、きっぷのいいねえさんタイプがいつも得意というわけでもなく、実際帰りのフェリーで出会ったいわゆる自称さばさばねえさんな方は適当にかわしたあげく、途中でドロンしてしまい、あとでミナさんに(帰りも同じ部屋だった)どこ行ったかと思った、とわかっている微笑を浮かべて言われたりもした。そのへんは多分一生成長しない。ははは。

旅に限らずだけど、多分私は、シャイというか今どきの言葉でいえばコミュ障に限りなく近い方だし、声も通らないし、おれに話しかけんなオーラを放ちがちな人である。という前提はあるものの、どうせ人と関係を持つなら、一対一の関係性が好きだし合っているとも感じる。

一対一の関係の中で、相手の内面をみせてもらえるのは楽しいことだし、だからといってぐへへのぞいてやれーみたいなのはない。話したくないことは話さないので全然いい、というかそれはお互い様であり、会話の進み方によってなにが出てくるのかが逆におもしろいわけで。こっそり、そうかあこの人はそういう価値観なんだな、という理解がすすんでいく(これもお互い様だし、出会ってばかりであればほんの表面にすぎないとはいえ)、その過程がたのしい。

タイプが違っていても最低限気配りする箇所が似ていると、人として安心できるみたいなところはあるかもしれない。ものすごくちょっとしたありがとうとか、何かをもらったりあげたりしたら片付けるとかグラスを洗うのを自然にやるとか、そういうの。

ひとり旅で人に出会うというのは、その後関係が続くかどうかは置いておいて、話が弾んだり通じる相手(意見が合うばかりでもなくむしろ違っていても交換の仕方やリズムが合うというか)をみつける目が養われるというのはあるように思う。

別段試そうとしているわけでもないのだけど、タイミングや巡り合わせによって場を共にすること自体がまずおもしろいし、ちょっとした縁も感じる。その中で会話を交わし始めるきっかけもその時々で違って、そこからまた自分の世界にすっと戻りたくなる人と、やっていることをひとまず横に起き話し続けたくなる人がいる。

グループでもゼロとは言わない、だけど、グループは基本的にグループ内ですべてが完結しやすい。互いのつきあいもあるうえに、特に海外旅行中は他に気をつけることも多いし、多分、出会う人に目を向ける余裕はそんなに残ってない。そういう旅のスタイルというだけでそれはそれで全然ありだとは思う。

ただ、こちらからも、グループだとその人達が個々の人間だとわかっていても、グループという一つの個性で見てしまうところはどうしてもあって、個人には興味がわきにくい。自分が孤で個なゆえに、この人も孤で個だな、ひとりだな、と認識できないと、人として興味がわかない。仮に中のひとりに興味がわいても、そういう縁なんだなと接触をさっくりあきらめる。

そこにきてひとり旅同士だと、まずひとりで来ている時点でいやおうなしに孤で個な側面があらわれるし(普段は人との行動が多くても)、そういう点で、一対一が好きな内向一人旅型にとっては、旅は人に出会うひとつの機会ともいえる。実際、旅で出会って長く付き合うようになった友人はすべて、旅後も一対一で会いたいと思った人ばかりだ。すべてっつって、数えるほどしかいないけど。

ところで、件のミナさんとは連絡先を交換したけれど、2日間のつきあいだった。多分私だけじゃないんじゃないかなと思っているけれど、別に連絡したって全然よかった。だけど、なにかそこで完結した感があった。続く関係もあれば、その場で終わりだからこそよい思い出が残ることもある。それもまたありだと思っている。

とほ