旅の記憶と五感。

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旅語り

五感の中で一番情報量が多いのが視覚、ついで聴覚、嗅覚、触覚、味覚と言われている。

と、ネットでは、『産業教育機器システム便覧』など幾つかの資料をもとに各割合も合わせて記載されている記事を多く見かけるけれど、肝心の原本が確認できなかったため、ここでは割合は記載しないでおく。ただ順位に関してはあながち間違ってないような気はする。というだけで話をすすめる。ここからは私の主観である。

で、旅先の記憶は圧倒的に視覚からくるものなのだろうか。イエス。けれど、そう答えた瞬間に、いやそうかな、と打ち消す自分もいる。なぜなら、どこでもいい、ある特定の場所について脳内に視覚的に蘇った瞬間、そこに付随する音の記憶も同時に蘇るからだ。音は自己主張の激しい音だけとは限らない。静寂もやはり蘇る。その光景に付随していれば自然に。だから視覚と聴覚は、記憶においては、一番手と二番手ではなく、セットでいい気もする。

じゃあ他の感覚はセットじゃないのか、というと、もちろん他の記憶もセットになりうる。五感すべてが合わさったものが一番インパクトのある記憶として残る。いやそうかな。と、脳内打ち消し隊がここでも出てくる。うん、そうだな、少なくとも一番ではない。

五感のどれが強く記憶に作用するかは、人によっても違う気がする。

なぜこのようなことを書くかというと、私にとっては、印象的な旅の記憶として残るものは意外に嗅覚からくるものも多い、と気づくできごとが先日あったからだ。これがもともと今日書こうと思っていたこと。

先日、インドで買ってきた石鹸を浴室用におろした。袋をあけた途端に、ふわっとサンダルウッドの香りが鼻をくすぐった。途端に意識がインドの町中に舞い戻った。今も浴室中にサンダルウッドのにおいを充満させてきたところ。やはりインドにいた。もちろん記憶の中の私には服を着せている。

インドのにおいといって私がまっさきに思い出すのは、お香、それもこのサンダルウッドだ。他にもいろいろなお香が混じっているとは思う、けど、真っ先にこれ。日本にいようと、他の国にいようと、ふとどこかで香るたび、自動的に、騒がしいインドの街並みを歩いている自分の姿が思い出される。嗅覚から視覚と聴覚が呼び戻される感じ。

嗅覚からくる記憶は、他に比べて、なぜか私に文章で残させようとする力が強い気がする。実際、私の旅メモには至るところににおいに関する記述がよくみられる。

インドのある一定の気温を超えた冬の匂いがたまらなく好きだ。
インドの匂いが好きというと、こっちにいる人、こっちにきたことがある人には結構な割合でアンモニア臭&牛糞臭?とつっこまれるけど、そこは好きとは言わない、言わないけど、遠く混じった匂い込み、な気がしないでもない。あと、大気汚染に加担しているものの匂いも込みな気がするから、わたし人類的におかしいのかもしれない。

インドだけではない。

チェンナイの空気。湿度。日中漂うパクチーやらナンプラーやら、とにかくすっぱさと独特の香料のまじったにおい。このいかにもタイ的な湿っぽすっぱ風味の空気に加えて、ああこれも好きだったと思い出したのは、ランドリーサービスの柔軟剤のにおい。バックパッカーエリア特有のにおい。ここまで強烈に香るというのは、環境のことを考えたらいいわけない、毒々しいとすらいえる強力さではあるのだけど、それでも旅的にきらいといえない自分がいる。

・・・でもわからないな、視覚と聴覚はツートップすぎて記憶の大部分をしめているから、かえって意識していないだけかもしれない。実際、圧倒される景色をみても、「うわあ~・・・以上(語彙)」で終了することもよくある。

嗅覚はそれだけ特徴的だから、なんとなく希少性を感じて書き残しておきたくなるのかもしれない。旅を文書で記録しておきたい本能が、これこそがそれである、と手に合図を送り、いそいそとペンとノート(あるいはスマホ)を取り出させる。

ともかく、石鹸の話に戻すと、私は旅の記憶は嗅覚によるものが意外にインパクト強いなと思ったところから、映画と旅を主軸とするツイッターのアカウントでは、インドやインド映画についてつぶやくことが多く、同好の士も多いために、ふと思い立ってアンケートをとってみた。

 

 

ちなみにこの4択は、私の勝手な選択である。選択肢が予め用意されているというのは先入観を与えてしまうものなので、できれば自由回答がよかったけれどしょうがない。

最終結果は、お香のにおいがトップの私にとっては意外なこと、スパイスがダントツであった。まあでもインド=スパイスみたいなところはあるから意外でもなんでもないのかもしれない。でもわたしにとってスパイスがトップにくるのはアラブ諸国なんだよな。逆にインドではスパイスを特別に意識したことはない気がする。というか、スパイスではとっさに出てくるにおいの記憶がない。その方がおかしいのかもしれないけど。

このようににおいの記憶ひとつとっても、個人差がある。とすれば、五感のどれが一番旅の記憶に作用するかも、人によって違うのかもしれない。

ちなみにアンモニアは言わずもがなの尿的なそれである。これはインドに行ったことがある人ならうなづけるんじゃないかと思う。私が始めてインドに行き、タクシーの中から街を眺めたた光景で最初に抱いた感想は「立ちションしてる人多っ!」であった。ただ発展の加速とともに街の清浄化も(部分的に)進んでいるように見えるインド、もしかすると数年後にはこのにおいは消えているかもしれない。その他も一定数ある。内訳が気になるところ。

私は、嗅覚がたしかに特徴的な記憶を残す面はあるかもしれないけれど、タイのメモでも書いたように、嗅覚は空気の感触ともつながっているような気もする。においは動きのある空気に運ばれてやってくる。その湿度。温度。その点では触覚とセットになりやすいとも言えるかもしれない。

空気といえば目に見えないもの。気配。だから、動物的な感覚というか本能というか、もっというと第六感も実は混じっているかもしれない。混じっている気がする。いやどうかな。ほらまた打ち消し隊がやってくる。

五感の話を自分の感覚だけで話すのは楽しいけれど、ここでは今年急激にもてはやされるようになった「エビデンス」はなにも提示してないので、話半分で聞いといてください。

とほ

P.S.
まあ、スパイスも国によって種類も配合も違うし、一口でいうのは雑すぎるとは思いますが。

 

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