3番目のAirbnb周辺がとてもヒンドゥエリアであること

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インド日記
4月某日

三番目のAirbnbに移ってきて2週間ほどたったある日。

この日の前半はだめだめデーだった。

昨年末にバンガロールにきてから、安泰でつつがなく日々がすぎていき、インドは別段いつもありえない笑いのネタ満載の国とかじゃなく普通に暮らしているかぎり普通なんですぜとSNSに書き込みたくなるほどで、そりゃ小さいぼったくりやすっとぼけはあるけれどそのかわしも含めてもはや日常にすぎず、だいたいみんな普通にいい人だし、でもふとやっぱり南だからだろうかこのままでは北に住むようになった時に対応力失っているのではあるまいかどこかで再び鍛えるべきなんではなどとあさってな方向の悩みが出てくるほどで、しかし杞憂だった、杞憂でした、郵便局で久しぶりに「でたよインドだよ」案件が勃発し、「ランチ行ってるので待て」のお約束を二人分こなしたあとに人の話を聞こうとしない係員と言い争いのあげくインドのばーかばーか!と心で悪態をついて飛び出すということがあった。

でも、ばーかばーかモードになりつつもどこかでよしこれでこそインドと謎の合格点を出している自分もいて、やはりインド好きはちょっとおかしいのかもしれない。それはそれとして、でも、だめだめデーだったのは、実をいうとインドは安泰だったけれどもそれとは別の個人的なことで気がふさぐ事案を昨年から抱えていて、そのストレスがここ最近とみに大きくなっていて、それも一役買っていたかもしれない。朝はそれで鬱々としていた。だから郵便局案件も、私の内側にも原因がなかったとはいえない。

ともかくも、それで急ぎで送る必要があった大きな荷物を再び抱えて一旦オートでAirbnbまで戻り、くさくさした気持ちでベッドに寝転んだ。そのまま家にいたら夕方以降に闇落ち確定だったため、背中をベッドから引きはがして気晴らしに外に出た。

それで、ステップン歩きに適していそうと目をつけていた遠くの公園まで歩いてみることにしたのだけど。

三番目のAirbnbにきて初日に軽くマーキング的な街歩きはしていたものの、周辺をじっくり歩いたのは実はこの日がはじめてだった。

五感で町の雰囲気をはかる。

というのは、今度のAirbnbのいいところとして、中心部に向かうメトロの最寄り駅が徒歩7分の距離にあるから。なので、最初の2つのAirbnbでは控えめにしていたメトロ沿線沿いの繁華街や中心部に行く頻度が増えていた。それに徒歩圏内にも、バンガロールで有数の規模のオリオンモールやハイパーマーケット(巨大スーパーマーケット)リライアンスがあるので、どちらかといえばそういうモダンな方面を先にせっせとまわったり、利便性の恩恵を優先したりしていた。

が。

歩きはじめてすぐに特大ガルーダを門に配した寺院に出くわした。インパクトの強さにしばらくためつすがめつし、夕方の拝観時間までは閉まっているようだったので、中を見学するのはあきらめて再度公園に向かって歩き出した。

と、少ししたところでさっきより規模は小さいもののまたガルーダを配した寺院に出くわす。ガルーダを突出してみかける場所ってそういえば今まであまりなかったような、ここはヴィシュヌ推しの町なのかな(ガルーダはヴィシュヌ神の乗り物である聖鳥)、町ごとに推しの神様が強かったりというのはあるだろうか、でもエアビーからすぐのところにガネーシャ寺院もあるしな、そういうわけでもないのかな(象の顔を持つガネーシャはシヴァ神の息子)、などといまだ生半可な知識をもとにつらつら勝手に憶測しながら歩いていく。

そこではたとイスコン寺院が思い浮かぶ。そうだ、ここはくっきりと、明確にそういう場所じゃないか。

後日イスコン寺院を参拝した時に撮った写真

 

インド最大級のイスコン寺院があることは、移ってくる前に次の町のランドマークとして押さえていたし、来てからもその白く輝く特徴ある建物をエアビー付近の通りから日常的に目にしていた。モールやハイパーマーケットに行く時にその前を何度か通ったし、そのうち参拝するつもりでもあった。のだけど、なんというか、この日までは単にそこにあるものであった。それが急に本来の意味を持って再浮上してきた。本来の意味、つまり、クリシュナ神をまつるヒンドゥ教の聖地として。

クリシュナといえばヒンドゥ教の三大神の一柱であるヴィシュヌ神の代表的なアヴァターラ。どうやらやはりここはシヴァよりヴィシュヌ色の強いエリアなのかもしれない。

クリシュナ神のおひざもとでブリンダーヴァンに遠出してみた。

イスコン寺院の正式名称は、クリシュナ意識国際教会(International Society for Krishna Consciousness)。イスコンはその英語表記の頭文字(ISKCON)。インド人宗教家A・C・バクティヴェーダンタ・スワミ・プラブパーダが創設した宗教団体で、この人がクリシュナの教えを西洋に広めたらしい(上記拙記事から引用)。

 

クリシュナ神のおひざもとでヒンドゥ神話について考える。

クリシュナ神のおひざもとで問答を挑まれる。

クリシュナ神は、叙事詩『マハーバーラタ』と、その一部を抜粋した聖典『バガヴァットギーター』の中心的登場人(神)物であり、ヴィシュヌ神の代表的なアヴァターラ(化身)。ヴィシュヌ神は、ヒンドゥ教の三神一体トリムルティ(ブラフマー神、ヴィシュヌ神、シヴァ神)の一柱であり、世界の維持を司る。

 

 

その後、公園まで行って人々にまざってぐるぐると何周もしてまた家がぎっしりと立ち並ぶ狭い路地を戻ってきたのだけど、そのあいだにも、強く漂ってくるお香、過ぎては現れるせまい路地の家々の前に描かれたコーラムの鮮やかさ、色彩豊かな寺院、通りの入り口に鳥居のようにほどこされた神々の彫刻、イラスト、そういった外界からの刺激から、浮かんでは消え浮かんで消えするものがあった。

思えば、一番目のHSRレイアウトはこぎれいで宗教色があまりしなかった。けど、それはそれで久しぶりのインドそれも生活の場として日本から来たばかりの身を慣らすには申し分なく、その適度な開け具合、レジデンシャルエリアとして十分な平安と治安は、今でも今後長期で住むことにした場合の候補地になっているくらいだ。

二番目のHBR&HRBRレイアウトは、まず最初にムスリムエリアのインパクトの強さがあり、その後しだいに所在がわかってきたヒンドゥエリアとクリスチャンエリア、その住み分けとミックス具合の妙に、その地に住むいとおかしさをとても享受するようになった。

だから結局わたしは、どこだろうとこの国を楽しむ素地はあるのかもしれない。

それでも、こうして歩き回っていて、三番目のレイアウトがザ・ヒンドゥな色の濃いエリアであることが分かった今、あーやっぱわたしヒンドゥの空気が好きなんだわと、自分の中であらためて強い何かがおりてくる感覚があった。インドに来た、インドにいる、と私にもっとも強く思わせるのは、やはりヒンドゥ(ヴェーダ)文化を濃く浴びた時なんだろうと。

で、ここでまたはたと気づく。そもそもレイアウト名がここはそういう場所だよと告げていたじゃないか。今まではHSR、HBR、HBRBと記号だったのに、ここではじめて固有名詞になった。その名もマハラクシュミレイアウト。

マハーは「偉大な」の意、ラクシュミはヴィシュヌ神の妻であり、富や豊穣を司る女神の名前だ。また出てきたヴィシュヌ関連。

さらにここでもうひとつ、ホストの名前がラクシュミだったことも思い出す。インドでは神様の名前を持つ人はめずらしくない。だからこじつけといわれればそうですね、でしかないんだけれども。

ここまで読んでくれた人の9割が、この人はいったい何を書きたいのかとお思いであろうことは承知のすけであるけれども、つまり、こうして街歩きをしながら順次気づいていった過程から私が受け取ったのは、さすがにこの三連の気づきが起きたならどうやらサインがきているようだということだった。つまり、気分を転換しなさいよ、あなたはあなたが求めた場所に今いるじゃないか、ということ。

そういうわけで、前半はだめだめだったりインドめ!な日でもありつつ、インドに対する自分の好きも再浮上する日でもあって、歩きながらずっとなんなんだろうな自分とインドの関係ってみたいなことをつらつら考え、すべては初めからそこにあったことを順を追って思い出していく過程の中、前半の憑き物のようなものがぽろぽろと落ちていき目を開いてみればなんと!ここは私の味わいたかった世界ではないか、という流れが我ながらいとおかしであったので、自己満爆裂だけどそのまま書き落としておく。

しかもこの日は、おなかが空いた状態で入ったドーサ屋さんのセットドーサが味覚ビンゴすぎて、最終的に大きな合格印の一日となったのだった。

 

 

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イスコン寺院に関する補足
イスコン寺院自体は新興教団による設立なので、伝統的なヒンドゥ(ヴェーダ)文化とは画したほうがいいのかもしれないけれど、どうだろう、そのへんはわからない、私の中で起きた流れの方が私にはだいじなのでその時感じたままを書いた。後日行ってみところでは、多くのインドの人が普通に参拝していたし、こういうのって門外漢がやいのやいのいうのって愚だな、とも思う。参拝する「ノリ」は、もちろん真摯な人もいるだろうけど多くは日本人の神社参拝感覚とそうかわらないようにも感じた。少なくともヒンドゥ関連施設としてランドマークであるのはまちがいない。

 

 

マトゥラー近郊の町でイスコン寺院に参拝した話。
クリシュナ神のおひざもとでブリンダーヴァンに遠出してみた。

トリムルティについてあれこれ書いてみた記事。
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バガヴァットギーターについて触れた記事。
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ついでに日本の神様とインドの神様の関係性あれこれ。
神話に出会う:姉妹で日本神話vsヒンドゥ神話バトル