語り部のいる町シムラー、インド映画『Tamasha』のロケ地。

ロケ地-インド

 

インド/パキスタン/インドネシア旅2019、ロケ地巡り更新。(旅程はこちら

 

 

 『Tamasha』
監督:イムティヤーズ・アリー
出演:ランビール・カプール、ディーピカー・パードゥコーン
制作国:インド
公開:2015年11月 (インド)

あらすじ:
シムラーの裕福な家庭に育つヴェドはお話を聞くのが好きな少年。隠し貯めた小遣いを握りしめては山の上に住む語り部に会いに行き、お話をせがむ。今日はラーマーヤナに出てくる悲恋話の続きを。しかし語り部の口から飛び出すのはトロイ戦争や王妃ヘレンの名前。話がちがうと訴えるヴェドに語り部はいう。なにがちがう、物語は物語じゃないか。みなつながっているんだ、きみ自身の物語だってそうさ、なぜどこでなにがはどうでもいい、物語はただ楽しめばいいのさ。ヴェドはその時から自分も周りの身近な世界を観察し始める。そうだ、物語はどこにでも転がっている。
やがて青年になったヴェドは、旅先のコルシカ島で同じインドから来た女性タラに出会う。旅の恥はかきすて、開放的な島で二人は映画の主人公になりきって束の間の時を楽しむ。

 


 

イムティヤーズ・アリー監督といえば恋愛映画の旗手。ということにインド映画界隈ではなっているようです。かな。そんな印象。

この映画もそう、といえばそう。恋愛要素あります。がっつり。だけど私にとってこの映画が特別なのは、ひとえにこれがストーリーテラーの話だから。

この監督にやられている話は前にもしましたが、現在公開されている長編作品数は8本、中でもこのTamashaは私にとって特別です。監督作品の中どころか、現時点でインド映画の中で一番好きな映画を選ぶとしたらこの題名をあげるかもしれない。実のところ、私には生涯抱えていたい映画が幾つかありますが、インド映画云々はもう関係なく、この映画もそのひとつになってしまっています。

とここまで書いて。その先がまあ書けないこと書けないこと。それというのも、前回と今回で更新が空いてしまったのは本業がタイトというのもあるのですけど、この思い入れのせいで何書いたらいいのか暴走して長くなり収集つかなくなりそのうち更新順序に迷走し始めちがうちがうよ本題はロケ地巡りの報告なんだからと我に帰るなどしていたからです、という言い訳を投下して本題に戻ります。

 

というわけでロケ地巡り報告です。

前回の『バンバン!』に引き続き、今回も場所はイヒマーチャル・プラデーシュ州シムラー。イムティヤーズアリー作品ではおなじみのインド北部。

 


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シーン1:ヴィドの家周辺多分)。家は教会脇の坂道をあがったあたり多分)

場所:ザ・リッジ周辺、クライストチャーチやタウンホール

 

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.
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『きっと、うまくいく』でもでてきたシムラー中心部にある広場ザ・リッジ界隈は、この映画でもたくさん出てきていました。とくにクライストチャーチは何度も。二度目、ヴェドが成長して帰ってきたあとの場面でも。

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.

教会は、特に印象的な場面があったわけではないのだけど、何度も登場していたのは家の近くだったから。ということは帰ってきてから撮ってきた写真とシーンを照らし合わせて確認。

 

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.
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タウンホール脇の階段は、友達と待ち合わせて語り部のいる山の方面にかけだしていく場面で出てきます。

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.
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撮影が行われたのは2014~2015年ですが、ヴェドの少年時代の設定ですから、映画の中ではタウンホールも古いし、町並みも今と違っています。そのへんはCG処理なんでしょうね。

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.
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このへんも出てきたような、という帰国後検証で判明したあたりの写真を、どさくさにまぎれて投下。

 

シーン2:成長したヴェドが戻ってくる。

場所:シムラー駅(トイ・トレイン)

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.

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トイ・トレインの走るカルカー・シムラー鉄道の終点シムラー駅。成長したヴィドがその小さな列車に乗って戻ってきます。

この駅、実は別の映画のロケ地として行ったという。でも帰国後確認したらそっちの映画は違う駅で、こっちの映画に出てきていたという。”そっちの映画”については待て次号。トイ・トレインの話も待て次号。

 

シーン3:Don is back!
場所:Hotel Willow Banks?(あるいはその周辺)

 

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.

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Don is back!で軽やかにヴェドが走り回るあたり。情報源はHotel Willow Banksのサイトから。シムラーで撮影された映画のリストが載っているのですが、そこにTamasha含むI.アリー監督2作品の撮影場所としてわりと親切に詳しい説明がのっているのですが、実際にシムラーにいる時には、どっちの映画も私には場面がピンとこず。

上の最後の写真はカフェでランチをとっている時に上からみおろして撮ったもので、サイトに載っている写真に1番近い。実際にそこから景色を眺めたら、ああここ、となったのかも。宿泊客しか入れないエリアだったので、結局カフェ兼レストランでランチしただけになりました。カフェは雰囲気あり。グラタンの味はうすかったけど。

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.

 

以下はホテル周辺。うろうろしていて撮った写真の中から、映画の中でヴェドが喜び軽やかに走り抜ける町並みに1番近い風景を選びました。角度的にも件のホテルのあるあたりなのは間違いないとは思う。


 

シーン4:語り部のいる場所(多分)。
場所:/ジャクーテンプル(Jakhu Temple)のある山のどこか。


Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.
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ジャクーテンプルは、ザ・リッジから1.6KMほどの山の頂上にあるハヌマン神が祀ってある寺院。

語り聞かせの行われていた場所が、本当は今回この映画のロケ地の中で一番見つけたかった場所でした。だけどここもピンポイントでは見つけられず。ハヌマン寺ってね、山の上なのね、標高約2200メートルのシムラー、なのにさらに200m以上高い、坂も急でね、さくさく登って降りて探して登ってみたいなことはできんのじゃーい!(涙)

というわけで、この山のどこかです。多分この山のどこかにある、はず。今回そんなの多い。

ザ・リッジ付近には、年齢や健脚度合いによりジャクーテンプルまでかかる時間が書かれた看板があります。私がかかった時間は内緒です。






 

シムラーは、ヴェドが物語に出会い、物語に戻った場所。

映画の中では、旅から戻ったあとのデリーが主な舞台なのですが、旅先スペイン・コルシカ島は、そこでのできごとがヴェドが自分を取り戻し始める起点となったことは間違いなく、だから重要な場所。さらにはシムラーも、いやシムラーこそが原点で、だからこそロボットのように生きるようになっていたヴェドが自分を取り戻すために戻る必要があった場所。

ヴェドはもう少しでつかめそうな答えを求めて語り部のもとを訪れます。年老いた語り部は認知症を患っており話もおぼつかないのに、ヴェドは自分の物語がこの先どうなるのかを必死に問いかけます。いやいやヴェド、語り部は占い師じゃないんだからw。けれど、少なくともある種の人々の、なによりヴェドの、物語の中に自分を見出す性質を考えると、語り部も占い師も大きな違いはないのかもしれません。

“なぜどこでなにがはどうでもいい”、答えをみつけるのは自分。

 

Visited a film location of "Tamasha" in Shimla.

ところで、ジャグーテンプルまでゆっくり登っている時、頂上から少し下のあたりに小屋のおみやげやさんがありました。

この手の神さまグッズのお店は珍しくないけれど、配り用にほどよい(コラ)ハヌマンやガネーシュのキーホルダーが目にとまり、どうせならこういう場所で買うのも悪くないかもとなんとなく見始めると、店主は説明はしてくれながらも押し売りするでもなく自由にみせてくれて、その語り口がなんとなく気に入り、買うならこのおっちゃんからやな、と6個ほどみつくろい、お勘定をお願いしました。

すると店主、新聞紙にハヌマンを包みながら、たかが、というのは語弊があるけれど、金額にして1つ20ルピー程度のキーホルダーを、これを触る時はちゃんと手を洗ってからにしてね、神様のキーホルダーだからね、というようなことをいっている。

そのあたりで、あれ、と、なんだかこの店主に興味がわいてしまい、そこからは話を聞くためにそこにいて、おじさんもずっと話していて、それは私が質問するからなのもあるけれど、売る売らないに関係なく、誇示や押し付け圧もなく、神さまやシムラーの話や詩の一節などがよどみなく淡々と口から繰り出されていき。

私の関心が伝わったのか、そのうちおじさんは、自分が大学時代から今まで気になる言葉を見つけるたびに書き溜めてきたというノートを見せてくれました。

英語とヒンディのまじりあった文章がびっしり埋まっている。ところどころに赤いビンディらしき沁みがついていたり、紙がばらけた箇所もある。それらすべてがこの人の思想の歴史。

インドって本当いろんな人がいる。こんなところで大学卒の人が神さまグッズの小さなおみやげもの屋をしている、という設定が私にはなんだかとても興味深く。インドではよくあることなのかな。かもしれないけれど。どの町でもどんな人からでも内面を垣間見せてもらえる機会があると、私はとても楽しくなる。

 


 

それにしても本当、今回のロケ地クエストは、このように、思い入れのある映画のわりに、多分、とか、はず、というの多かったです。まあ基本事前の下調べがざるなので、この映画に限ったことではないですが。で、帰国後ブログ書く段階になってDVDをおさらいするなどして、あーほんのもうちょっとさきまで歩けばよかったんやん!などと地団駄踏むところまでがセット。

ただね。北部の独特な冷たい空気が好きなせいもあると思いますが、シムラー全体が物語にみちみちているようにも感じていて、おまけに件の店主のような人にも出会えたりしたものだから、滞在自体が幸せだったというのはある。ロケ地クエスト抜きにしても、シムラーはもう一度戻りたい。

 

イムティヤーズアリー監督は、北部の空気を映像におとしこむのが本当にうまい監督さんだなと思います。しんと心に残る映像が多い。はじめて観たのが『ハイウェイ』で、当初はこの旅、イムティヤーズアリー巡りと称してもっとがっつり他の映画のロケ地も組み込もうとしていたのだけど諸事情によりルート変更となったため断念、それはさておき、ハイウェイも大半は北部なのですよね。この人の映画を観ていると、北部をドライブしたくなります。インドは暑い国のイメージがあるけれど、北部を走る車の外には

・・・・・・・ってほらあ、いつまでもくっちゃべってもうて、結局だらだら記事になってるじゃないか(汗)。このへんで強制終了することにします。

いやしかし(まだ続くか)、ロケ地探訪というなかなかニッチなブログをほそぼそ続けているわけですけど、その中でもさらにインド映画はまだまだみている人の分母が小さい、その中でも英語字幕でしか観られない、そのうえ好きという人をあまりみかけない気がする本作。

そんな映画のロケ地話を長々とする本ブログ。しかも煮詰まると更新滞る本ブログ。なにかこう、読まれるブログ、みたいな方向から全速力で逆走している気がいたしますが、ここまで読んでくださったあなた、そんなものずきなあなたにエアキッスを贈ります。