雨のキャンプと失った靴底の話。

キャンプ

 

キャンプには、街歩き用のローカットのウォーキングシューズで行っている。わりとどこでもそれで行く。すごく歩く人ではあるけれど、登る人ではないので、必要がないのもあって、ハイカット、ミドルカットのトレッキングシューズや登山靴は持ってない。

でも今回のキャンプでは足元を守りたかった。理由はヒルである。4月後半くらいから丹沢周辺はヤマビルが出る、キャンプ場でも出る、と事前に知り、ヒルだけにひるんだものの(寒)、行くのをやめる方向にはいかず、肌を出さない対策で行くことにした。

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それで、靴箱の中に眠ってあった、10年前くらいに買った合皮のカジュアルなブーツ型の靴で行くことにした。昨年の冬に久しぶりに何度か履いて、まだいけるやん、という感触を得たばかりであった。見た目は悪くないし、とはいえ古い靴なので、汚れが怖いなどもない。平底なので歩きやすくもある。今回の目的に見合った選択と思われた。

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しかし今回は雨のキャンプでもあった。行ったら降られたのではなく、半ば降ることはわかっていてのぞんだ。時期をずらせない事情もあったし、雨の中でキャンプをしたことがなかったので、テントの耐水性を一度試してみたい、というのもほんのりどこかにあったかもしれない。

 

10年前の靴
雨のキャンプ

なんてわかりやすい伏線であろうか。その前にタイトルでばれてるという話であるが、そうです、溶けました。溶けたというか、見事に靴底のゴムがぼろぼろにくずれました。

雨については、家を出るときには降っていなかったのであわよくばこのままとは思ったし、キャンプ場の最寄駅の渋沢駅に着いて景気良いざあざあぶりが目に入ったときには、「や、ここまでのは望んでなかったんですが」と勝手なことを思ったけれど、来てしまったものはしょうがない、そのままバスで終点の大倉まで行き、レストハウス前で少し待ち、いきおいがきもーち弱まった頃をみはからって徒歩15分の距離を歩き始めた。行き方は予習していたし、そこまでたいへんな道じゃなさそうだからさっさと行ってしまえばいい、さっさと、さ

しかしさっさと行ってしまうつもりだった道は途中、水捌けが悪く、道路一面池のようになっていた。迂回できそうな箇所を探したけれど、ない。探しているうちに、レインパーカーを着ているとはいえ、上半身も荷物もどんどん濡れてくる。覚悟を決めてジャブジャブ入っていくしかなかった。たちまち靴の中が水浸しになった。それにしたって浸水早くね?とはちょっとは思ったけれど、それどころじゃなかったので、とにかくキャンプ場までの道を急いだ。そしてキャンプ場の人に驚かれながらチェックインをし、テントをたて、中に逃げ込んだ。

一息ついたあと、いやーん、と思いながらもしょうがないのでずぶずぶに濡れたままの靴を履いて、ごつごつの石をよけながら河原を歩き、川に渡された板をばいんばいん渡って、トイレと炊事場へと向かった。靴底が不穏なことになっているのはそのときに気づいた。テントに戻って確認すると、左右両方ともぼこぼことクレーターができていた。

2日目、靴底はさらにやばさを増した。川原を歩いていても、多分私の足、一部がすでに外にコンニチワしてる、というのが靴下越しに伝わってきた。確認すると昨日のクレーターが陥没し、穴が開いていた。そして周辺に新たなクレーターができていた。ギャー、頼むー、どうか帰るまで持ちこたえてー。

この時点で今回のキャンプは極力動かないキャンプにする、と決めた。どのみち私のキャンプの名目は「積ん読解消」である。それでも、たかがトイレと炊事場への道がなんとも遠く感じられ、一往復するたびに、コンニチワ度合いが増していった。こういう時に限ってまた、トイレが近かったりするのだった。

3日目、どうか持ちこたえての祈りも虚しく、状態の悪かった方の右側の靴底の前半分がぺろりとはげた。これでは歩行すらままならない。底と足の甲部分を髪留めゴムでとめた。令和の時代に何をやっているのか私は。昭和の時代の名作アニメ、ペリーヌの気持ちがちょっとわかった。知ってます?ペリーヌ。

でも、私はさすがにペリーヌのように靴底を作ることはできない。せいぜい髪留めゴムでとめる程度である。なんとも心許ない。明日はこれで帰途につかなきゃいけないのか、と思うとさすがにめいった。今日もキャンプ場でじっとしていよう。読みたい漫画もあるし、幸いとても気持ち良く晴れてくれたから、林間で、緑を眺めながら、過ごせれば十分。

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そう思ったのに、本当にそう思っていたのに、ちょっとだけ、のつもりで気づいたら近くの戸川公園をぐるりと一周していたときには、さすがに自分がちょっとわからなくなった。崩壊寸前ゴム巻き靴で。なんなら茶室でお抹茶飲んでまったりまでしたし、蓬摘みの道草までした。

そうはいっても、足元が心許ないと各方面で行動が制限される、ということは学んだし、反省もした。ヒルが怖いからといって、それしかないからといって、古い靴を履いてきてはいけない、という教訓を得た。

多分あれだ、靴箱が竜宮城だったんだと思う。とっくに靴は年老いてたのに、見た目が若いから気づかなくて外に連れ出して、そしたら、あの水溜りのじゃぶじゃぶで玉手箱あいちゃって、たちまちおじいちゃんになって、本来の姿に戻っちゃったんだと思う。気の毒なことをした。靴箱の中で幸せな夢を見させてあげればよかった(意味不明)。

とか言いながら、バス停でバスを待つあいだに、レストハウスの中にあるお店で登山靴やウォーキングシューズが売られているのを見つけ、速攻購入し、おじいちゃんとはさよならしたんだけど。

そういうわけで、帰りの道は、無事ゲットした新しい靴ですこぶる快適だったのだった。まあ、もう少し早くここに靴が売っていることに気づいていたら、3日間よぼよぼ歩かずにすんだのになあ。

最後に新しく買った靴の話をすると、このOnというブランドは初めてだったのだけど、買ったお店YAMACAFEはさすが登山口にあるだけあって、レンタルサービスもしており、レンタルした靴で登山ができて、歩き心地が気に入れは購入も可能ということで、私も何足かしっかり周辺を歩かせてもらい、その結果、軽く、なんとも歩き心地がよく、長歩きでも疲れなさそうな弾力で、紐をしめなくてもちゃんと足にフィットしてくれるローカットシューズに決めた。

なによりお店の人が本当に感じよくて、靴選びに関する新たな知見もいろいろ与えていただき、買うならぜひここで、という気持ちになったのだった。おじいちゃんと来たのは、ここで靴を買え、ということだったのかもしれないね。知らんけど。

ただ、実は、ハイカットの靴も、最初は選択肢になかったにもかかわらず、履いてみると、ごつすぎず重すぎず、街歩きもいけそうで、かなり悩み、でも結局は着脱しやすさ、自分の用途を考えて、あと正直にいえば値段にも負けて、ローの方にした。でも今もちょっと、ハイカット欲しかったな、と思っている。まあ買った靴も満足しているし、しばらく履いて、このブランドが気に入ったら。

とほ

p.s.
あと、今回のキャンプは、そういうわけで、雨とかヒルとか靴とか隠れた諸事情があったわけだけれど、終わってみれば、やー今回のキャンプよかったなあ、という記憶で落ち着いているの、自分、わりと本気でお花畑仕様なのかもしれないと思っている。

p.s.のp.s.
トップ画像の靴底は、サンティアゴ巡礼路で花がいけられていた誰かの靴です。

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